多年生植物が,気温,地温,水分の過不足,日照時間の長短など環境の支配を受けて,地下に養分を蓄積して休眠状態に入るとき,球状,塊状,いも状になった器官を球根といい,球根をつくる植物を園芸では広い意味で球根植物と呼んでいる。一般にユリ科,ヒガンバナ科,アヤメ科などの単子葉植物が多いが,双子葉植物のキク科,カタバミ科,キンポウゲ科などにも見られる。球根はそれを形成する器官のいかんによって次のように呼ばれる。(1)鱗茎bulb 地下の短縮した茎に肥厚した葉がついているもの。チューリップ,スイセン,アマリリス,ユリ,ダッチ・アイリスなど。(2)球茎corm 地下の茎が肥大して球状となり,葉が変形した皮に包まれているもの。グラジオラス,クロッカス,フリージア,バビアナなど。(3)塊茎tuber 地下の茎に養分を蓄えて肥厚し塊状となったもの。シクラメン,カラジウム,グロキシニア,アネモネなど。(4)塊根tuberous root 根に養分を蓄えていも状に肥厚したもの。ダリア,ラナンキュラスなど。(5)地下茎rhizome 地下茎そのものが養分を蓄えて肥厚したもの。カンナ,ジンジャー,ジャーマン・アイリスなど。
園芸では,球根植物は球根を植えつける時期によって,次のように分けられる。(1)春植球根 気温,地温が上昇してくるころに植えつけるカンナ,ダリア,グロキシニア,グラジオラスなど耐寒性にとぼしい植物。(2)秋植球根 気温,地温が低下してくるころ発根,生育がはじまるチューリップ,スイセンなど耐寒性の強い植物。ただし,フリージア,球根カタバミのように厳しい寒さには耐えないものもある。
球根植物は生育の終わったとき,作業上の便宜と増殖の目的で掘り上げて次期まで貯蔵するが,春植球根は凍らないように保温をはかり,秋植球根は涼しい場所で乾燥しておく。球根の繁殖は自然に分球するものを分けるのが普通であるが,ヒアシンス,アマリリスのように母球を切断するか,切傷をつけて人為的に子球を発生させる方法もとられる。
執筆者:浅山 英一
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植物体の一部が地下で養分を貯蔵して多肉化し、冬期または乾期のような生育に不適当な季節をしのぐための役をするもの。多くの場合は栄養繁殖の役をもする。植物学用語というよりは園芸で用いられる語であり、植物学上はいくつかの範疇(はんちゅう)に分けられる。スイセン、チューリップなどでは鱗茎(りんけい)、グラジオラス、クロッカスなどでは球茎、シクラメン、グロキシニアなどでは塊茎(かいけい)、カンナ、ジャーマンアイリスなどでは肥大した根茎、ダリアなどでは塊根がそれぞれ球根とよばれる。
[福田泰二]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(森和男 東アジア野生植物研究会主宰 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…花卉は一般には花の咲く草本を意味するが,園芸作物として花卉という場合は,観賞用に栽培する切花(切葉,切枝を含む)類,鉢物類,花壇用苗物類,球根類,花木類,芝類をさす。本項では,この意味での花卉の生産,流通・貿易を取り上げる。…
…休眠する発育段階は種により一定していて,内分泌機構(脳・前胸腺・アラタ体など)によって調節されている。【正木 進三】
[植物の休眠]
植物では種子,休眠芽,球根,胞子に休眠現象がみられる。種子はふつう成熟と同時に休眠状態に入り,外側を固い種皮によって保護される。…
※「球根」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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