改訂新版 世界大百科事典 「トゥハーリスターン」の意味・わかりやすい解説
トゥハーリスターン
Tukhāristān
現在のアフガニスタン北部の地域をさす。イスラム時代に使用された名称で,トゥハラ人の土地の意味である。トカラ(吐火羅),トハラともよばれた。この地域は古くからインド,西アジア,中央アジアを結ぶ交通の要衝にあたり,トゥハラ人の名は既にストラボンの《地理誌》に挙げられ,また《史記》大宛伝の大夏がそれにあたると考えられる。玄奘の《大唐西域記》巻一に覩貨邏(とから)として記述され,その地域の文字,言語,風俗が中央アジアのソグドやヒンドゥークシュ山脈以南のインド世界とも異なることを指摘している。したがってトゥハラ人とはアム・ダリヤ流域からヒンドゥークシュ以北にかけて居住した東イラン系の人々を指したと思われる。現在ではイラン系民族(タジク,アフガン)のほか,多くのトルコ系民族(ウズベク,トルクメン)が移り住むようになり,トゥハーリスターンの呼称は使われなくなった。
執筆者:小谷 仲男
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