中央アジアの地名。玄奘(げんじょう)の『大唐西域記』によれば,現在のアフガニスタンの北部に覩貨邏国(トハリスタン)と呼ばれる国が記されている。『史記』の大宛伝にみえる大月氏(だいげつし)に滅ぼされた大夏(たいか)もトハラにほかならない。その中心は古代はバルフ,中世にはクンドゥズに置かれ,東西交通の要衝として栄え,バクトリア王国,大月氏,クシャーン朝以来,政治・文化の中心をなした。覩貨邏国の文語として,ギリシア文字表記のバクトリア語(イラン系の言語)が用いられていたが,資料そのものは支配領域内外から多く出土している。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
中央アジアの地名、民族名。トカラともいう。古代ギリシアのストラボンは、ギリシア植民が中央アジアに建てていたバクトリア王国に、紀元前2世紀に北方からトハラ人が攻め入り、これを滅ぼしたと伝えている。この事実から、バルフ(古代のバクトラ)を中心とするアムダリヤの河南地区をトハラ地方とよんだようで、中国では吐呼羅、吐火羅と写し、7世紀の僧玄奘(げんじょう)は覩貨邏、都貨邏と書いている。イスラム時代のトハリスタンはそれを継承した呼称である。この地区は、中国からパミールを越えてきたシルク・ロードの一つと、インドからカイバー峠を経た大道との交会点であり、また、アムダリヤを下る舟運があり、陸路でサマルカンド方面、東イラン方面と連絡していた。したがって、南方のインド文化は早くからここに流入した。また、アレクサンドロス大王の東征によってギリシアの一植民地となると、それらを基礎としてギリシア的、バクトリア的文化を発展させ、インドや中国に大きな影響を与えた。
[松田寿男]
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「トカラ(覩貨邏)」のページをご覧ください。
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…イスラム時代に使用された名称で,トゥハラ人の土地の意味である。トカラ(吐火羅),トハラともよばれた。この地域は古くからインド,西アジア,中央アジアを結ぶ交通の要衝にあたり,トゥハラ人の名は既にストラボンの《地理誌》に挙げられ,また《史記》大宛伝の大夏がそれにあたると考えられる。…
※「トハラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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