改訂新版 世界大百科事典 「トランキリティアイト」の意味・わかりやすい解説
トランキリティアイト
tranquillityite
Fe8(Zr,Y)2Ti3Si3O24の化学式を持つ月に特有な鉱物。このほか少量のCa,Al,Mn,Cr,Nb,希土類元素,Hf,Uを含む。結晶系は六方とも菱面体晶系とも報告されているが定かでない。a=4.85Åの単位胞を持つ蛍石構造を基本とする。色は濃黄赤色でほとんど不透明に近い。比重は4.7。数十ミクロン以下の短冊状で,輝石,斜長石の粒間を埋めるトロイライト,パイロクスフェロアイト,クリストバライトなど末期晶出鉱物とともに,すべてのアポロ着陸地点の海および高地の岩石中に産する。月のみに知られる鉱物で,静かの海Mare Tranquillitatisにちなんで名付けられた。56~99ppmのUを含む。
執筆者:武田 弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報