日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドクグモ」の意味・わかりやすい解説
ドクグモ
どくぐも / 毒蜘蛛
人に致命的あるいは激しい症状をおこさせる毒をもつクモ。世界のクモ類4万種のうち、毒をもつクモは三十数種であり、もっとも毒性の強いクモはオーストラリアにいるシドニージョウゴグモAtrax robustusで、体長30ミリメートルほどの黒色のクモ。このクモにかまれると6時間から3日間ぐらいで死ぬことがある。これに次いで強い毒をもつとして恐れられているクモは、アメリカのドクシボグモやドクイトグモ、熱帯地方に広く分布するゴケグモである。日本で比較的毒の強いクモは、フクログモ科のカバキコマチグモであり、体質の個人差によって症状がさまざまであるが、致命的なことはない。いずれにしてもクモが積極的に人を襲うことはない。
なお、ドクグモの名称は、かつてコモリグモ科の名称として用いられたが、これはヨーロッパのタランチュラの伝説に基づいたものであり、毒性が弱いことはほかのクモと変わらないので、子グモを背負う習性からコモリグモと改称された。
[八木沼健夫]