日本大百科全書(ニッポニカ) 「コモリグモ」の意味・わかりやすい解説
コモリグモ
こもりぐも / 子守蜘蛛
wolf spider
節足動物クモ形綱真正クモ目コモリグモ科に属するクモの総称。ヨーロッパやアメリカではオオカミグモという。日本では古くはドクグモとよばれていたが、毒性の弱いことはほかのクモと変わらないのでコモリグモと改称された。このクモ類は日本には70種以上いるが、ほとんどは似た習性をもっている。つまり、産んだ卵を糸で包んで扁球(へんきゅう)状に仕上げ、これを腹端の出糸突起につけて歩き回る。子グモがかえると、母グモはその子グモを背中に負ぶって保護するのでコモリグモと名づけられた。もともと造網性系統であるが、進化の途中で徘徊(はいかい)性に移ったらしく、つめの数は造網性クモと同じく3本であるし、生活史のどこかに造網性の片鱗(へんりん)のうかがえるものがある。なかには成体になって網をつくるものもある。もっとも普通にみられる種は、春から秋にかけて出現するウヅキコモリグモPardosa astrigeraで、草間を徘徊する。日本海沿岸や太平洋沿岸北部の海岸砂丘にすむイソコモリグモLycosa ishikarianaは、体長23ミリメートルもある大形種である。
[八木沼健夫]