改訂新版 世界大百科事典 「コモリグモ」の意味・わかりやすい解説
コモリグモ (子守蜘蛛)
wolf spider
コモリグモ科Lycosidaeに属するクモの総称。卵囊を糸疣(しゆう)につけて歩き回り,かえった子グモをしばらく腹背にのせておく習性をもつのでこの名がついた。地中に住居をつくる種類ではこのような子守行動をもたないものもある。体長は5~15mmと大きさはまちまちで歩脚末端につめが3本あり,中にはクサグモのように網を張るものがあるなど造網性のクモとの類縁を示すが,大部分は網を張らずに歩き回って捕食をし,またハエトリグモと同様に視覚に依存した求愛行動を行う。8個の単眼の配列は特徴的で,4個の小さい眼が背甲の前面下部に横列し,その上方に大きな眼が2個前方を向いて位置し,また背甲の背面両側に大きな眼が側方を向いて位置する。水田における害虫の捕食能力は大きく,生物的防除に役だっている。日本では約90種,世界では約2600種が記録されている。代表種のウヅキコモリグモPardosa astrigeraは,体長は雌8~10mm,雄5~7mm。早春より晩秋まで,日本各地の原野にふつうに見られる。頭胸部にT字形の黒褐色の斑紋がある。
執筆者:萱嶋 泉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報