日本大百科全書(ニッポニカ) 「タランチュラ」の意味・わかりやすい解説
タランチュラ
たらんちゅら
tarantula
節足動物門クモ形綱真正クモ目に属する特殊なクモをさすが、ヨーロッパとアメリカでは、まったく異なる種類をタランチュラとよんでいる。
(1)ヨーロッパでいうタランチュラは、コモリグモ科のタランテラコモリグモLycosa tarentulaである。このクモは、毒が弱く、かまれてもたいした影響がないにもかかわらず伝説が絡んで毒グモとされ、これにかまれると舞踏病をおこすとか、発熱しても踊り狂うと病気が治るとかいわれてきた。毒グモとして有名になったのは、いろいろな伝説があるが、その一つとして、15~17世紀の南ヨーロッパでおこったヒステリー症(タランティズム)患者が、大形のこのクモにかまれたと思い込んだことに起因するというのがある。タランチュラの語源は、イタリアの都市タラントにちなみ、学名の種名もそれに発している。また、イタリアの民俗舞曲タランテラも患者の踊りが発展したものであるといわれている。
(2)アメリカやアフリカでいうタランチュラは、トタテグモ科、ジョウゴグモ科、オオツチグモ科の、地中性または徘徊(はいかい)性のクモの総称で、とくにオオツチグモ類をさすことが多い。このクモ類には世界最大種が含まれており、南アメリカのブラジルに生息するルブロンオオツチグモTheraphosa leblondiがそれで、体長10センチメートルに達する。中央アメリカには、美しい色彩のニシキオオツチグモが生息する。両種とも毒性は弱いが、大形なので牙(きば)も大きく、かまれたときの痛みは比較的大きい。また、ニシキオオツチグモには体毛に弱毒がある。
以上のほか、クモ形綱無鞭(むべん)目ウデムシ科(タランチュラ科)の動物に、タランチュラ属Tarantulaがあり、アフリカ、インド、北・南アメリカ大陸に分布している。
[八木沼健夫]