日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドナウ川のさざなみ」の意味・わかりやすい解説
ドナウ川のさざなみ
どなうがわのさざなみ
Valurile Dunǎrii
ワルツの曲名。作曲者は新生ルーマニア王国の初代軍楽総監督となったイバノビッチIosif Ivanoviči(1845―1902)で、1880年に作曲。ほかにも通俗舞曲の作品があるが、この一作で世界的に名を残した。前奏と四つの小ワルツおよび終結部からなり、短調と長調を組み合わせて構成されている。フランスの影響を受けているとはいえ、哀愁を帯びた旋律はあくまでも東欧的な特質を備えているといえよう。この旋律は世界中で広く親しまれ、アメリカでは『アニバーサリー・ソング』、日本では田村貞一(ていいち)作詞による「月は霞(かす)む春の夜」という唱歌『ダニューブ河の漣(さざなみ)』(1902初演)として知られるようになった。
[三宅幸夫]