短調と並んで西洋音楽の調体系における二つの音種属の一つ。平均律では,長・短それぞれ12調がある。ある調が長調であるか短調であるかは,まず音階の第3度音が主音と長3度をなすか短3度をなすかによって決定される。また近代の機能和声にあっては,トニカ(主和音),ドミナント(属和音),サブドミナント(下属和音)の三つの主要和音がいずれも長3和音であれば長調,短3和音であれば短調ということができる。このような音階の形をそれぞれ長旋法(あるいは長音階),短旋法(あるいは短音階)といい,例えばハ長調はハ音上の長旋法,ハ短調はハ音上の短旋法である。ただし短調では,上述の自然的短調のほかに,和声的要求から第7度音が半音上げられて主音への導音となることで属和音のみ長3和音となる場合(和声的短調),さらに旋律的要求から上行時に第6度音も半音上げられて下属和音も長3和音を構成する場合(旋律的短調)がしばしばある。
長調・短調は教会旋法から徐々に発展してきたもので,理論的にはグラレアヌスが《ドデカコルドン》(1547)で提示したイオニア旋法(ハ音上の全音階)とエオリア旋法(イ音上の全音階)に始まる。しかしその本格的な展開は,3度音程を重視する3和音論や各音・各和音相互の有機的連関を強調する機能和声論などの成立を待たなければならない。そうしたなかにあって,とくに長調は長3和音が自然倍音列に含まれるなど,自然現象にその存立根拠を容易に見いだせるのに対し,短調についてはその種の音響学的な説明が困難であるため,さまざまな説が提起されてきている。長調・短調を本質的には同一のものとみなす和声一元論や,短調を長調の鏡像として自然界には存在しないはずの下方倍音列からとらえようとする和声二元論などがおもなものである。ところで音楽の実際においては,すでに中世の世俗的な単旋律音楽から長調的な傾向を認めることはできる。しかし調体系の確立時期に関しては諸説があり,最も遅い時期としてはバロック後期が考えられている。一方,19世紀後半からは半音階的和声法の発展に伴って,長調・短調の区別自体があいまいとなっていった。
なお,ドイツ語のドゥアDur(長調),モルMoll(短調)は,ラテン語の〈堅いdurus〉,〈柔らかいmollis〉からきている。
→調[西洋] →調性
執筆者:土田 英三郎
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調性音楽の二つの音種属の一つ。調性は主音、属音(主音の完全五度上の音)、下属音(主音の完全五度下の音)、およびそれらをもととする主和音、属和音、下属和音の主要三和音の機能によって確立し、そこから得られる基本音列が長音階と短音階である。長音階に基づく曲を長調の曲という。なお、このように長調と短調は本来同一の基礎のうえにあり、短調を長調の変種と考える和声一元論に対し、両者をまったく対等な二元的現象としてとらえる和声二元論の考え方もある。
[南谷美保]
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…初期の〈詞〉の作品は,《楽府詩集》の中の〈近代曲辞〉に集められている。 やがて元になって,歌劇である〈曲〉が流行しはじめると,その〈曲〉のメロディに沿った歌辞の替歌の文芸である小令,中調,長調などが流行した。58字以内のものを小令,それ以上90字以内のものを中調,さらに長編をつらねた場合にはこれを長調といった。…
…宋代になって詞は韻文文学としても鑑賞されるようになるが,長編を慢詞,短編(60字くらいまで)を小令と呼んだ。のちに58字までが小令,59字から90字までが中調,91字以上を長調とする説があるが,厳密にくぎれるものではないし,また中調,長調なる語は宋代にはみえない。元代になると詞はすたれて散曲が流行する。…
…六調子のほかの枝調子(沙陀(さだ)調,乞食(こつしき)調,水調,性調,道調など)も古くは用いられ,それらもほとんどは唐代俗楽二十八調に含まれる。【三谷 陽子】
[西洋]
英語のkey,ドイツ語のTonartに相当する概念で,西洋の音楽理論においては長調あるいは短調が特定の音(x)を主音(中心音)とした場合にこれをx調という。したがって,音組織における中心音の存在と他の諸音に対するその強力な支配関係を意味する〈調性tonality〉よりも具体的な概念である(しかし現実には,〈調〉と〈調性〉はしばしば混同して用いられている)。…
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