日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナクシュ・イ・ロスタム」の意味・わかりやすい解説
ナクシュ・イ・ロスタム
なくしゅいろすたむ
Naqsh-i-Rustam
イラン南部、ファールス州のシーラーズ北東約60キロメートル、古都ペルセポリスの北方約5キロメートルにある遺跡。アケメネス朝ペルシアの王墓と、ササン朝ペルシアの王の浮彫り、方形建造物、拝火壇などがある。王墓はダリウス1世(在位前522~前486)、クセルクセス1世(在位前486~前465)、アルタクセルクセス1世(在位前465~前424)、ダリウス2世(在位前424~前404)のもので、正面からみた外形はいずれも十字形をなし、高い崖(がけ)に掘り込まれている。岩壁の下部には、ササン朝ペルシアの初代の王アルダシール1世をはじめ、シャープール1世、バフラム2世、ナルサフの叙任式や戦闘の場面の浮彫り七面がある。アケメネス朝の王墓の上部は、征服した諸民族に担がせた壇の上に立つ王が、アフラ・マズダーを拝する場面の浮彫りがある。またシャープール1世がローマ皇帝を捕虜にした場面の浮彫りもある。
方形建造物はキロス時代(前559~前529)のもので、整然とした切石(きりいし)積みで保存もよく、拝火神殿か墓と推測される。付近の岩から刻んだ拝火壇二基は貴重な遺物である。
[糸賀昌昭]