日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナポリ黄」の意味・わかりやすい解説
ナポリ黄
なぽりき
セラミック顔料の一つ。アンチモン黄antimony yellowともいう。アンチモン酸鉛nPbOSb2O5(n=2~3)のパイロクロア形(立方晶)化合物を主成分とする黄から橙(だいだい)色の顔料で、セラミック顔料としてもっとも古いものとされ、古代バビロニアの陶器ですでに使われていたと考えられている。鉛釉(なまりゆう)にアンチモン化合物が添加されると黄の発色をするところから考案されたものである。主成分の化合物を中心に、二価から五価までの陽イオンが原子価融通形式で置換固溶し、複雑な組成の固溶体を生成する。酸化スズ(Ⅳ)を配合する方法もある。低火度の鉛釉にしか使用できないが、Zr‐V系、Sn‐V系、Zn‐Si‐Pr系などの新しい顔料の出現までは、唯一の黄色セラミック顔料であったが、これらの新しい顔料にほとんどその場を譲り、現在はわずかしか使用されていない。
[大塚 淳]