化学辞典 第2版 「アンチモン化合物」の解説
アンチモン化合物
アンチモンカゴウブツ
antimony compound
スチビンSbR3(Rは水素,フェニル,アリール基)は,酸化数-3の化合物であるが,通常は酸化数3のハロゲン化物,酸化物,硫化物などがよく知られ,相当する酸化数5の化合物は酸アニオンとなりやすい.Sb2O3は,塩素化合物または臭素化合物とまぜてプラスチックや布の難燃剤として用いられる.天然には,自然アンチモン(金属),方安鉱Sb2O3,バレンチン鉱Sb2O3,輝安鉱Sb2S3が見いだされる.ハロゲンXとは,SbX3,SbX5の分子性化合物をつくるが,酸化数5の臭化物,ヨウ化物はSbX3と X2 に分解しやすく,安定な状態で得られない.アンチモン化合物の両性的性質を反映し,HⅠSbX4,HⅠSbX6のようなハロゲンアンチモン酸が得られる.中心になるアンチモンの配位数は6である.酸化物,硫化物でSb2Y3,Sb2Y5(YはOまたはS原子)の固体およびMSbY2,M3SbY4型のオキソ酸,チオ酸塩が知られている.錬金術時代から医薬品に用いられた吐酒石は,ビス(タルトラト)二アンチモン(Ⅲ)酸カリウム三水和物K2[SbⅢ2(C4H2O6)2]・3H2Oで,水に易溶.アンチモン化合物は,摂取するとはげしいおう吐性をもつ毒物である.化合物は劇物指定(アンチモン酸ナトリウム,酸化アンチモン(Ⅲ),酸化アンチモン(Ⅴ),硫化アンチモンを除く).PRTR法・第一種化学物質指定.経口クラス2,作業環境クラス2.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報