日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハタグモガニ」の意味・わかりやすい解説
ハタグモガニ
はたぐもがに / 旗雲蟹
[学] Lybia hatagumoana
節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目オウギガニ科に属するカニ。甲長約5ミリメートルの小形種。甲は丸みを帯び、背面は微小な顆粒(かりゅう)で覆われ、甲域に分かれている。昭和天皇が、1957年(昭和32)に相模(さがみ)湾の水深85メートルから採集されたのが初めてで、学名と和名はその際の調査船「はたぐも」にちなんだものである。両方のはさみにイソギンチャクを一つずつ挟んでおり、外敵に対して振り上げて身を守るが、はさみの不動指に2本、可動指に1本の内方を向いた棘(とげ)があり、イソギンチャクを挟むのに適応している。このような習性をもつカニは本種のほかに8種が知られているが、キンチャクガニL. tesellataに代表されるようにサンゴ礁や岩礁にすんでいる。いずれの種も詳しい生活史は不明である。
[武田正倫]