日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナブサイソギンチャク」の意味・わかりやすい解説
ハナブサイソギンチャク
はなぶさいそぎんちゃく / 花房磯巾着
[学] Actinodendron arboreum
刺胞(しほう)動物門花虫(はなむし)綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目ハナブサイソギンチャク科に属する海産動物。南西諸島以南のサンゴ礁海域に分布する。開いたときの口盤の直径は20~30センチメートル、体高20センチメートルぐらい。口盤周辺には触手のような太い腕が48本あるが、これは触手ではなく口盤周辺が深く切れ込んだためにできた腕であり、この腕の表面に小さな樹状の触手が密生する。口盤、腕、触手とも黄褐色、枝分れした触手の先端部のみは裂けた鉛筆キャップ状の黄色の刺胞球となる。体壁は滑らかで、乳白色ないし麦藁(むぎわら)色をなし、褐色の小斑(しょうはん)をもつ。サンゴ礁の砂上に触手を広げていて、一見ウミトサカを思わせる。触れれば急速に砂中深く縮退し、その後に砂上に大穴を残す。触手の刺胞球中には長い刺胞が無数にあり、この刺胞は人の皮膚を通す。人が触手に触れれば刺胞に刺され、赤く腫(は)れあがって、やけどのようにただれる。近縁種に、腕が著しく長く、主として腕の両側に触手をもち、触手の先端の刺胞球が球状のウデナガウンバチMegalactis hemprichiiがある。この種も人を刺すが、ハナブサイソギンチャクに比べると痛みは弱い。
[内田紘臣]