やけど(読み)やけどねっしょうかしょう

家庭医学館 「やけど」の解説

やけどねっしょうかしょう【やけど(熱傷/火傷) Burn】

◎重症度によって適切な対応を
[どんな病気か]
[原因]
[症状]
◎受傷部位を冷やすことが第一
[治療]
[予後]

[どんな病気か]
 やけどは熱によりおこるいろいろな外傷の状態をいいます。直接傷害を受けるのは皮膚ですが、その部位、範囲、程度によっては生命にかかわる全身的な影響を受けることがあり、注意が必要です。
 また、深いやけどの後に残る瘢痕(はんこん)(傷跡(きずあと))やケロイドは、精神的な苦痛や日常生活での不自由をもたらすことがあります。
●やけどの発生状況
 1年間におよそ3人に1人がやけどを経験しているといわれます。医療機関を受診するのはそのうち約10%です。受診した人のうち、入院が必要になる中等度以上のやけどを負った人は100人に1人です。年齢的には乳幼児、学童が圧倒的に多いのですが、これは家人の予防的配慮がいかに重要かを物語っています。
 やけどの発生は、季節的には冬にもっとも多くみられ、そのつぎが夏です。
 最近は、労務災害、火災、自然災害によってもたらされた重症や集団のやけどに対応するため、各地に熱傷センターなどの専門の医療施設が整備されつつあります。

[原因]
 もっとも多いのはやかんやポットの湯、茶碗(ちゃわん)の湯などの過熱性液体によるもの、そのつぎに多いのがアイロン、鍋(なべ)、ストーブなどの過熱性固体によるものと、火災によるものです。生活様式が多様化し、単車のマフラー、ファンヒーターの吹き出し口に触れて受傷する例もみられます。
 子どもに特有で、重症熱傷の原因でもある浴槽(よくそう)転落は、スイッチの取りつけ場所の改善や浴槽のフタの強化などによって最近は減少しています。

[症状]
 やけどの重症度は、その深さ、面積、部位で決まります。重症度に応じて応急処置と受診すべき医療施設を選ぶことがたいせつです。
●深さ
 一般にⅠ、Ⅱ、Ⅲ度の3つに分類されます。一般に受傷直後は深さの判定はむずかしいものです。
 Ⅰ度は表皮(ひょうひ)のみのやけどです。症状は皮膚の紅斑(こうはん)と浮腫(ふしゅ)(むくみ)だけで、水疱(すいほう)(水ぶくれ)はできません。痛みも軽く、瘢痕はふつう残りませんが、まれに色素沈着をおこします。
 Ⅱ度は真皮(しんぴ)にまでおよぶやけどで、水疱、発赤(ほっせき)、びらん(ただれ)ができます。このⅡ度熱傷は、さらに浅層熱傷と深層熱傷に分かれます。
 浅層熱傷は、毛嚢(もうのう)、皮脂腺(ひしせん)、汗腺(かんせん)が熱で壊されずに残っているものです。1~2週間で瘢痕を残さず治ります。強い痛みがともないます。
 深層熱傷は、表皮の新生に3~4週間かかり、瘢痕が残ります。痛みはむしろ軽いことが多いのですが、植皮(しょくひ)が必要になることがあります。
 Ⅲ度熱傷は、皮膚の全層ならびに皮下組織にまでおよぶものです。受傷部位は白っぽいか灰色で、乾燥しています。痛みは軽く、痛みのないこともあります。瘢痕が必ず残り、表皮の新生には長期間かかります。やけどの範囲が一定以上の場合は植皮が必要です。
●面積
 広い範囲のやけどの面積を算出するもっとも簡便な方法は「9の法則」(表「やけどの面積の判定」)です。これはからだの各部の面積を9の倍数で表わしたものです。ただし、子どもは、おとなより頭部、顔面が大きく、下肢(かし)が小さいため、補正が必要です。狭い範囲のやけどの面積を算出するには、その人の手のひらを1%とする手掌法(しゅしょうほう)が用いられます。
●重症度の判定と病院の選択
 やけどの重症度はその深さ、面積、部位で決まります(表「やけどの程度と受診先」)。重い持病のある人、高齢者、乳幼児の場合は、ふつうの人より重症となります。少なくとも、水疱ができていて、その面積が本人の手のひら(約1%)より大きいやけどを負った場合はすぐに受診しましょう。
 Ⅱ度のやけどが15%以上、Ⅲ度のやけどが2%以上の場合は中等症で、手当に緊急を要する可能性があります。時間外であっても入院施設のある病院を受診してください。
 病院に連絡する場合、あるいは救急車を呼ぶ場合も、「何歳の誰が、いつ、どんな場所で、どのような物によって、どの部位にやけどをしたか」という情報をあらかじめ伝えておきましょう。
 Ⅱ度のやけどが30%以上、またはⅢ度のやけどが10%以上の場合、顔、手、足、陰部にⅢ度のやけどがある場合、気道の熱傷、骨折、軟部組織の損傷を合併している場合は重症です。緊急に総合病院で適切な治療を開始する必要があります。すぐに救急車を呼びますが、その際、おちついて前述の情報をあらかじめ先方に伝えておきましょう。

[治療]
 まず受傷部位を冷やすことがたいせつです。衣服の上から受傷した場合は無理に脱がせず、まず流水で冷やします。冷やすことで痛みがやわらぎ、やけどが深く進行するのが抑えられます(「やけど(熱傷)したときの手当」)。
 Ⅰ度のやけどで小範囲の紅斑だけの場合は、冷やすだけで治ります。水疱ができた場合は、できるだけ破ったり取り除かないようにします。いったん水疱ができた皮膚はもとどおりにはなりませんが、きれいな水疱膜は数日間もとの皮膚のかわりにはたらき、水分の保持、痛みの軽減、感染予防などに役立つのです。
 Ⅱ度以上のやけどの治療の基本は抗生物質外用剤の塗布です。ただし、深さ、部位、汚染度などによって使う外用剤の種類、質がちがいますから、皮膚科などを受診するほうが安心です。
 Ⅲ度のやけどの場合、とくに広範囲熱傷や重症熱傷の場合は、総合病院に緊急入院して、全身に悪影響を与えるショックに対する輸液療法(ゆえきりょうほう)を主とした救命治療(きゅうめいちりょう)がすぐに開始されます。

[予後]
 重症熱傷の場合は、循環不全(じゅんかんふぜん)(脱水)、感染による敗血症(はいけつしょう)(重度の全身感染状態)、肺炎などで死亡することがあります。高齢者や大きな病気をもつ人ほど危険です。
 深いⅡ度熱傷以上のやけどの場合、必ず瘢痕やケロイドが残ります。植皮などの適切な治療を行なわないと拘縮(こうしゅく)(傷跡が縮み固まる)による機能障害が生じることがあります。
 重症熱傷を負った場合、死亡は免れても、長期間の治療・療養が必要となり、瘢痕や機能障害で生涯悩まされることがあります。したがって、不注意や器物の欠陥によって取り返しのつかないやけどを負うことのないよう、日ごろから予防(事故防止)を心がけ、とくに高齢者や子どものいる家庭では十分注意しましょう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「やけど」の意味・わかりやすい解説

やけど

熱傷の俗称。火炎などによる場合は火傷ともいう。高温の気体(火炎を含む)、液体、固体に触れることによって生ずる皮膚や粘膜の損傷で、重症のものでは全身症状を呈し、死に至ることもある。化学薬品でも同様の症状を呈し、化学熱傷という。電気によるものは電撃傷として別に扱われる。

 熱傷の程度は、作用した熱の温度と作用時間によって決まる。したがって高温でも作用時間が短ければ軽症ですむが、比較的低温でも長時間作用すれば深い潰瘍(かいよう)となる。後者の代表例は湯たんぽや電気行火(あんか)による熱傷で、大部分が手術を必要とする傷を残している。

 やけどの重症度、すなわちショック症状をおこすかどうかの判定は、受傷面積と傷の深さ、受傷部位、受傷時の状況と合併症の有無、および年齢などによって決まる。たとえば顔面、手、足、外陰部などを含む場合は注意が必要で、火災時にみられる気道熱傷や骨折などの外傷を伴うときは重傷であり、また1歳以下および60歳以上の場合も要注意である。

[水谷ひろみ]

受傷面積の算定法

受傷面積は、予後の判定や治療法、とくに輸液の量の決定にもきわめて重要なので、できるだけ正確に算定する必要がある。計算方法は種々知られているが、救急時のおおよその目安としては「9の法則」がもっとも一般的である。これよりやや複雑で年齢差を考慮に入れた「5の法則」もよく用いられる。これらの「法則」は、熱傷箇所が全体表面積のどのくらいの割合(%)を占めるかという指標として用いられる。たとえば、成人の場合に用いられる「9の法則」では、顔・頭が約9%、腕は左右それぞれ約9%、下肢は左右それぞれ約18%にあたることが基準となっている。また、小児の場合は、構成比が成人とは異なるため「5の法則」や成長段階によって細かく分けた「ランド・ブラウダーチャート」が用いられる。

[水谷ひろみ]

熱傷深度の分類

熱傷深度は第一度から第三度に分け、第二度熱傷はさらに浅い第二度と深い第二度に分けられる。それぞれの特徴や治療方針は次のとおりである。

(1)第一度(表皮熱傷) 皮膚が赤くなり、ひりひりする程度で、浮腫(ふしゅ)(むくみ)もわずかにみられるが水疱(すいほう)(水ぶくれ)は生じない。数日で治り、あとに瘢痕(はんこん)を残さないが、一時的に色素沈着を残すことはある。

(2)第二度(真皮浅層熱傷および真皮深層熱傷) 数時間から24時間で水疱を生じ、これが破れると、びらん面となり多量の分泌液が出る。浅いものは2週間前後で軽い瘢痕を残して治癒するが、深い場合は表皮形成完了までに2~3週間を要し、かなり目だつ瘢痕を残す。また浅い第二度でも治療を誤って感染をおこすと、容易に深い第二度へ移行するので注意を要する。

(3)第三度(皮下熱傷) 壊死(えし)に陥り、表面は硬く乾いた真珠色、黄色調または灰黒色調を呈し、触れても痛みを感じない。表皮成分をすべて失っているので表皮形成はほとんど期待できず、通常は皮膚移植を必要とする。非常に長い期間をかければ高度の瘢痕を残して創面は閉鎖することもあるが、ひきつれなどによる機能障害をおこしやすい。また、高度の熱傷瘢痕上に、10~30年くらいの経過で有棘(ゆうきょく)細胞癌(がん)が発生することがある。

[水谷ひろみ]

重症熱傷時の全身症状

体表面積10%以上の熱傷では、多少にかかわらずショック症状をおこす危険がある。

(1)一次ショック 血管運動神経の反射による血行障害で、1~2時間後におこる。

(2)二次ショック 体液の喪失、電解質平衡の乱れ、血液濃縮、溶血などによる高度の循環障害で、2~48時間後におこる。皮膚が蒼白(そうはく)化し、口が乾く、あくびを連発する、四肢が冷たい、吐き気がするなどの症状で始まり、発熱、血圧降下、尿量の減少などがみられる。放置すると、脳の酸素不足により、興奮、狂暴、けいれん発作、嘔吐(おうと)などをきたし、きわめて危険な状態になる。

 受傷後1~2日のショック期を切り抜けると、ショック離脱期(2~7日)、低栄養期または感染期(8~21日)を経て回復期に入る。その間種々の臓器の合併症がおこりうる。有名な例はカーリングCurling潰瘍で、突然に上部消化器(胃、十二指腸)から出血する。また、ストレスによる一時的な血糖値上昇、甲状腺(せん)や性腺の機能異常などもよくみられる。

[水谷ひろみ]

治療

熱傷の治療は、20世紀の2回の世界大戦を経て非常に進歩し、近年はかなりの重症者が救命され、リハビリテーションを経て社会復帰に至っている。しかし日本では、熱傷の救急医療体制には、まだ課題も多い。熱傷センター、熱傷ユニットとよべる施設は少なく、また救急救命措置から社会復帰に必要な機能訓練までを含めての一貫した治療システムは確立されていなかったが、日本熱傷学会では2009年(平成21)に「熱傷診療ガイドライン」を刊行し、熱傷治療の標準化を目ざしている。

(1)全身療法 受傷面積が成人で20%、小児で10%を超えるときは慎重な全身管理が必要になる。受傷状況を詳しく聞きながらすばやく重症度の判定をし、必要に応じて輸液を開始するが、これが適切に行われるかどうかが重要となる。ショック期を切り抜けた後には栄養補給と感染症の治療、予防が主体となる。近年、熱傷患者の救命率は向上し、ショック期の死亡率は低下しているが、その後の感染症に起因する死亡率は依然として低下していないという傾向にある。

(2)局所療法 受傷直後には流水でどんどん冷やすのがよい。酸やアルカリによる場合はとくに十分洗い流す必要がある。その後、清潔な布で患部を包んで受診し、自宅ではチンク油などを塗らないほうがよい。感染の原因になり、治療にも差し支えるからである。

 局所療法として通常用いられる薬剤は「ヒビテン液」「イソジン液」などの消毒液、抗生物質入りの軟膏(なんこう)やメッシュガーゼ、そのほか生体包帯としての滅菌凍結乾燥豚皮も頻用されている。広範囲熱傷時におこりやすい緑膿(りょくのう)菌感染にはスルファジアジン銀入りのクリームが優れた効果を示し、副作用も少ない。局所療法の原則は自然治癒過程を助けることにあるが、後遺症を最小限にとどめるためには植皮術などの外科的療法を併用することもたいせつである。とくに顔、手、関節、外陰部など特殊領域の熱傷治療には、それぞれの部位に関する専門知識と技術が必要である。

[水谷ひろみ]

『杉本侃他編『熱傷』(1983・南江堂)』『日本熱傷学会学術委員会編『熱傷診療ガイドライン』(2009・日本熱傷学会)』

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改訂新版 世界大百科事典 「やけど」の意味・わかりやすい解説

やけど
burn

火傷ともいい,医学的には熱傷thermal burnという。高温の気体,液体,固体に触れることによって発生する皮膚障害。酸やアルカリなど化学薬品による皮膚の障害もやけどといわれるが,これは化学熱傷とよばれる。やけどの程度は,深さと広さによって決定される。

従来,第1~4度に分けられていたが,最近は深さと治療方針とを考慮して,第1度を表皮熱傷,第2度を真皮浅層熱傷と真皮深層熱傷,第3,4度を皮下熱傷と分類することが多い。深さは,作用温度と作用時間の両者によって決定される。たとえば,湯たんぽによるやけどは,温度はあまり高くないが,作用時間が長いため,意外に深いやけどとなることが多く,温度の高いものでも瞬間的にやけどをした場合には,浅いやけどですむことも多い。第1~4度のやけどの症状は以下のとおりである。(1)第1度(表皮熱傷) 表皮のみが熱で障害されたもので,紅斑を生ずるだけであり,ひりひりした痛みやほてった感じがあるが,1週間前後で治るのが普通である。あとに一時的な色素沈着や色素脱失を残す程度である。(2)第2度 真皮まで障害されたもので,最初は紅斑,浮腫を生ずるが,24時間以内に水疱となる。最も多いやけどである。比較的浅い真皮浅層熱傷では,水疱が破れると赤い糜爛(びらん)面を示すが,治療により2週間前後で表皮が再生して治る。かなり長期間にわたって色素沈着や色素脱失を残すが,瘢痕(はんこん)は残らない。これより深い真皮深層熱傷では,水疱が破れたあとは浅い潰瘍となり,治るまでに2週間以上かかり,あとに瘢痕が残る。(3)第3度 皮膚組織は破壊され,やけどの部分は壊死となって,知覚は消失する。壊死組織が脱落したあとは治りにくい潰瘍となり,徐々に肉芽組織が形成され瘢痕となって治るが,1ヵ月以上の長期間かかるのが普通である。(4)第4度 やけどの部分が炭化してしまうもので,事故や火災などのときにみられるが,通常はまれである。

やけどの重症度は,その面積,深さ,部位,合併症などを総合して決定される。一般に,軽症とは体表面積の15%以下の第2度,2%以下の第3度のやけどをいう。中等症とは15~30%の第2度,2~10%の第3度,重症とは30%以上の第2度,10%以上の第3度のやけどとされている。中等症,重症では入院治療が必要である。また,顔面のやけどは重症であり,外陰部から肛門周囲のやけどは汚れやすい部位のため,治癒が遅れる。さらに小児は成人より重症であり,一般に3歳以下は実際の面積の3倍,4~12歳は2倍の面積に相当するやけどと考えて治療する必要がある。重症のやけどでは,1~2時間後に,血管運動神経の反射による血液循環障害のため,一次ショックを起こす危険性がある。さらに,2~48時間後に二次ショックが起こる。これは,タンパク質や血漿の減少,血液の濃縮,電解質のバランスが破れることなどにより,高度の血液循環障害,臓器の酸素不足が起こるためで,血圧降下,手足の冷感,皮膚の蒼白化,脈拍の異常,発熱,痙攣(けいれん),嘔吐,尿量の減少,精神的興奮などの症状が現れ,生命の危険がある。そのほか,重症のやけどでは,脳,腎臓,肝臓,気道などにも種々の障害が発生する。

体質,部位,やけどの程度などにより,瘢痕を残して治った部分が隆起し,ケロイドになることがある。さらに,関節部の高度の瘢痕は,関節の運動機能の障害をひき起こすことがある。また,やけどの瘢痕の部分に,10~30年後に皮膚癌が発生することがある。これを熱傷瘢痕癌という。いったん瘢痕となって治っているやけどのあとが,潰瘍となったり,異常に隆起してきたときには,直ちに病院で診察をうけるべきである。

流水あるいは氷のう,アイスノン(商品名)などで局所を冷やすことである。そのうえで清潔な布やガーゼで包んで病院へ行く。以前は,チンク油などの油類,みそ,つぶしたジャガイモなどを応急処置としてつけていたこともあったが,このような処置は好ましくない。また,衣服をつけた部分がやけどを負っているときは,冷水につけ,そのあとで衣服をぬがせるが,皮膚がはがれないよう,はさみで切り開く。治療は軽症の場合,消毒と抗生物質軟膏による局所療法と,感染防止のための抗生物質内服が中心である。真皮深層熱傷,第3度熱傷では,適当な時期に植皮術が必要なことがある。中等症,重症のやけどは入院し,局所療法とともに,症状,重症度に応じて,補液,強心剤,副腎皮質ホルモン剤,抗生物質,鎮痛剤,鎮静剤,酸素吸入などによる強力な全身療法が行われる。

薬傷ともいう。硫酸,硝酸,塩酸,フッ化水素などの酸,アンモニア,苛性ソーダ,苛性カリなどのアルカリや金属塩類などによるやけどで,通例の第3度熱傷のような壊死を起こすことが多い。すみやかに流水で十分に洗い落とし,酸によるものでは重曹水,弱アンモニア水などで中和し,アルカリによるものでは希塩酸で中和し,そのあとは普通のやけどと同様の治療をする。とくに眼に対する治療は注意が必要である。
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百科事典マイペディア 「やけど」の意味・わかりやすい解説

やけど

火傷または熱傷の俗称。熱湯,蒸気,火炎などによる熱損傷。軽度のものは皮膚の発赤・疼痛(とうつう)のみで,数日でなおる(第1度)。中等度のものでは水疱(すいほう)形成がみられ(第2度),さらに高度のものでは皮下組織の壊死(えし),炭化がみられ,あとに瘢痕(はんこん)を残す(第3度)。一般に急性期には局所を冷却することが大切で,第2度以上では感染に十分に注意し,きずあとをなるべく作らないようにしなければならない。全身体表の成人では20%,幼小児では10%以上のやけどでは生命の危険があり,輸血,血漿(けっしょう)輸血,抗生物質療法などを強力に行う。瘢痕に対しては形成手術を施す。応急手当としては局所を冷水などで冷やし,消毒したガーゼでおおう。油を塗るような素人(しろうと)療法は避け,第2度以上ではなるべく早く医師の治療を受ける。
→関連項目腫瘍皮膚炎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「やけど」の意味・わかりやすい解説

やけど
burn

熱傷,火傷をさす。高熱の気体,液体,固体に触れることによって生じる皮膚および粘膜の傷害。病変が広範囲に及ぶ場合には重い全身症状に陥る。やけどは従来,臨床所見により1~4度に分類されていたが,最近では病変の深さに基づく次の分類が用いられている。 (1) 表皮熱傷 紅斑と浮腫,灼熱感,ひりひりする痛みを伴う。従来の1度に相当。 (2) 真皮浅層熱傷,深層熱傷 紅斑,浮腫が著明で,受傷直後ないし 24時間以内に水疱形成,びらん,潰瘍形成などをみる。従来の2度に相当。 (3) 皮下熱傷 潰瘍,壊死が生じる。従来の3~4度に相当。やけどの深さは温度と時間で決り,重症度は病変の深さと広さによって決るほか,2次感染によって多大な影響を受ける。やけどをしたときには患部をすみやかに冷やし,そのままの状態で受診するのが望ましい。2次感染が予防でき,局所の治療も容易となるからである。

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食の医学館 「やけど」の解説

やけど

ジャガイモ、クマ笹、スクワランが効く
 1年のうちで日本人の3人に1人が、やけどをするといわれます。12歳以下の子どもに圧倒的に多く、季節では冬にいちばん多く発生しています。体の部位、範囲、程度によっては生命にかかわることもあり、医師の処置が必要ですが、ごく軽度のものなら食品を利用する方法もあります。
 やけどに効果があるといわれるのは、ジャガイモやクマ笹エキス、深海ザメの肝臓に含まれる成分「スクアレン」を精製したスクワランなど。
 ジャガイモはつぶしてどろどろにしたものをガーゼなどにぬって患部にはり、クマ笹エキスとスクワランは直接ぬります。おぼえておくと、とっさのときに役に立つかもしれません。

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