触手(読み)しょくしゅ

精選版 日本国語大辞典「触手」の解説

しょく‐しゅ【触手】

〘名〙
① 多くの無脊椎動物の口の周囲や体の前端に並ぶ伸縮自在のひも状突起。触覚や化学感覚の受容器を備え、触覚や捕食の働きをするもの。クラゲやイソギンチャクでは刺胞を内没させている。
※山椒魚(1929)〈井伏鱒二〉「一ぴきの小蝦が〈略〉岩壁にすがりついた。さうして細長いその終りを見届けることができないやうに消えてゐる触手をふり動かしてゐたが」
② 他に働きかけようとする手。
※冬の日(1927)〈梶井基次郎〉一「向日性を持った、もやしのやうに蒼白い堯の触手は、不知不識(しらずしらず)その灰色した木造家屋の方へ伸びて行って、其処に滲み込んだ不思議な影の痕を撫でるのであった」

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日本大百科全書(ニッポニカ)「触手」の解説

触手
しょくしゅ

下等動物の体表に存在し、伸縮や屈曲を行う運動性の突起物を、一般的に触手とよぶ。同じ運動性の突起でも、鞭毛(べんもう)や繊毛には一定の内部構造が認められるが、触手にはそのような決まった内部構造は存在しない。触手の機能は動物種によって多様で、感覚器官、攻撃および防御器官(刺胞などによる)、捕食器官、固着器官などとして働くほかに、コケムシ類などでは呼吸器官としての機能も有する。触手の示す伸縮や屈曲の運動性は、触手を形成する筋肉によって行われるのが普通であるが、ナマコの場合のように、触手内部に体液を出入させて行うものもある。

[雨宮昭南]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「触手」の解説

触手
しょくしゅ
tentacle

無脊椎動物の口の周囲に輪状に突出する感覚器。自由に伸縮屈曲し,触覚,味覚などの受容器として,また食物の捕捉,密着などに用いられる。刺胞動物環形動物触手動物曲形動物などに見られる。イソギンチャク類,クラゲ類などでは,刺胞もち,触れた相手にし,毒液を注入するものもある。シャミセンガイなどでは触手がとして呼吸器の役もする。環形動物の多毛類の口前葉にある触鬚(しょくしゅ)も一種の触手である。

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百科事典マイペディア「触手」の解説

触手【しょくしゅ】

多くの無脊椎動物の口の周辺などにある伸縮や屈曲が可能な糸状あるいは紐(ひも)状突起。普通,先端に多くの感覚細胞が分布し,触覚,化学覚の受容器として働くほか,捕食または他動物への攻撃や自己防御(腔腸動物など),呼吸(触手動物)に働くなど,その機能は動物によりさまざまである。
→関連項目管足

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世界大百科事典 第2版「触手」の解説

しょくしゅ【触手 tentacle】

一般に無脊椎動物の口のまわりにあって,感覚器,捕食器,呼吸器などとしての役割をする表皮,筋肉性の細長い突起をいう。ふつう分枝,付属突起,繊毛や諸種の感覚細胞,分泌細胞をもっている。イソギンチャク類などでは口をとりまいて1列から数列の輪状に,ヒドロ虫類,クラゲ類のくらげ体ではの縁に触手が並び,刺胞細胞をもっている。クシクラゲ類には傘の背面に1対の粘着細胞をもった触手がある。渦虫類にも頭部背面に粘着性の触手をもつものがある。

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世界大百科事典内の触手の言及

【触腕】より

…軟体動物頭足類中,十腕形類(イカ類)にみられる1対の腕で,他の4対の通常腕よりはなはだしく長く伸ばすことができる。コウイカ類では第3,第4腕の間にあるポケットにたたみこまれていて,捕食の時にすばやく伸ばされる。それ以外のイカ類ではふだんは縮められているが,ポケットにたたみこまれることはない。触腕は柄部stalkと掌部clubからなり,掌部には通常2~4列,種によっては8~16列あるいは20列以上もの吸盤があり,その角質環の歯の大きさや並び方は通常腕のそれと異なっている。…

※「触手」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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