日本大百科全書(ニッポニカ) 「バシキール」の意味・わかりやすい解説
バシキール(民族)
ばしきーる
Bashkir
ロシアに住むタタール系民族の一つ。主としてロシア連邦のバシコルトスタン共和国を中心に、ウラル山脈南東部からボルガ川の草原地帯にかけて住み、人口は約145万(1989)。人種的・文化的にタタール人にもっとも近い。他のタタール人と同様、かつては草原遊牧民としてフェルト造りのテントで移動生活を行ったが、17~19世紀にロシア人による植民地化の圧力で定住し、現在は半農半遊牧的生活をしている。家畜はウマとヒツジが中心。ウマの一品種であるバシキール(パシュキル)種は小さいが、がっしりしておりステップでの生活に適している。ウマは農耕、運搬、乗用に供されるとともに、雌馬は1日に8~10リットルの乳を出し、それによって独特の発酵乳(クミス)が生産される。養蜂(ようほう)もユニークな産業として昔から続いている。宗教はスンニー派のイスラム教だが、ロシア正教会に属する者も多い。言語は、タタール語と同様トルコ語族のキプチャク語派に属するバシキール語を話す。
[片多 順]