タタール語(読み)たたーるご(英語表記)Tatar

翻訳|Tatar

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タタール語」の意味・わかりやすい解説

タタール語
たたーるご
Tatar

トルコ系諸言語の一つ。ロシア連邦のタタールスタン共和国モスクワの東およそ700キロメートル、首都カザン)を中心に、同連邦のバシコルトスタン、チュバシア、モルドビア各共和国などの諸地域に広がっている。話し手は約600万人(1989)。中国東北部や新疆(しんきょう/シンチヤン)ウイグル自治区などにも数千人のタタール人がいる。三大方言を有し、(1)中央方言はカザン・タタール、(2)西部方言タタールスタン共和国外のミシャル方言など、(3)東部方言シベリア・タタール。現代文語は19世紀中ごろに成立し、20世紀初めまでアラビア文字で表記されていたが、1929年からラテン文字正書法に移り、39年からはキリル文字を基礎とした正書法が用いられている。ラテン文字化の動きがある。他のトルコ諸語と比較して、かなり特徴的なことは、タタール語の母音i,e;o,u;ö,üが、それぞれ他のe,i;u,o;ü,öに対応することである。たとえば、タタール語のFelen(象の)boron(鼻は)ozon(長い).は、トルコ語のFilin burnu uzun.に対応する。

[竹内和夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タタール語」の意味・わかりやすい解説

タタール語
タタールご
Tatar language

ロシアのタタール共和国を中心に話されている言語。話し手は約 550万人。また,中国の新疆にも約 4000人。方言的には,話し手の約半数が住むタタール共和国のカザン=タタール語 (中央方言) ,ミシャル=タタール語 (西部方言) ,それに東部方言としてシベリアのタタール諸語に分れる。カザン=タタール語が標準語の位置を占め,狭義のタタール語はこれをさす。ロシア文字を使用。系統的には,いずれもチュルク諸語の一つで,その北西方言 (キプチャク方言) に属するとされるが,そのなかにあってバシキール語とともに特異な地位に立っている。他に南西方言 (オグズ方言) に属するクリミア=タタール語があったが消滅した。なお,以前には,もっと広く他のチュルク諸語もタタール語と総称した。

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