改訂新版 世界大百科事典 「バシキール語」の意味・わかりやすい解説
バシキール語 (バシキールご)
Bashkir
ロシア連邦内に2002年現在約167万人のバシキール人がいるが,そのうちバシキール語を母語とする者は70%弱にすぎない。バシコルトスタン共和国でもバシキール人はわずか22%で,ロシア人の39%,タタール人の28.4%を下回る。言語の系統としてはチュルク諸語に属し,タタール語にきわめて近い。バシコルトスタン共和国では,教育はロシア語かタタール語で行われている。他のチュルク諸語の/o/に/u/が対応し(トルコ語on:バシキール語y〈10〉,以下同じ順にあげる),逆に/u/に/o/が対応する(kuş:кoш〈鳥〉)。同様に/ö/:/ü/(göl:кл〈湖〉),/ü/:/ö/(üç:ɵc〈3〉)であり,さらに,/e/:/i/(beş:биш〈5〉),/i/:/e/(it:эт〈犬〉)のように対応する。この点はタタール語とまったく同じである。1938年ロシア文字正書法を採用したが,それ以前はタタール語(アラビア文字)を文字言語として使っていた。
執筆者:柴田 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報