改訂新版 世界大百科事典 「バラグタス」の意味・わかりやすい解説
バラグタス
Francisco Balagtas
生没年:1788-1862
フィリピンのタガログ語詩文学の父。ブラカン州ビガア町の貧しい鍛冶屋に生まれた。11歳のときマニラの下町トンドの富裕な家庭に奉公に出,主人の世話でサン・ホセ学院,サン・フアン・デ・レトゥラン学院を卒業した。当時のトンドはホセ・デ・ラ・クルスなど著名なタガログ詩人の集う町で,バラグタスの天与の詩才はここで花開いた。しかし彼の人生はかならずしも幸せなものではなく,1835年ごろから2~3年間と,56年から4年間,奇怪な罪状で牢獄生活を強いられた。なお1849年ごろバルタサルと改姓している。生活の資を得るために,また牢獄の悲憤を晴らすために,彼は多くの優れた韻文詩,韻文物語を書いた。《フロランテとラウラ》(1838)はなかでも不朽の名作といわれている。1924年に彼の文学的功績を記念して,バラグタサンBalagtasanと呼ばれる,掛合いの詩作の競争形式が作り出され,今日でも盛んに行われている。
執筆者:池端 雪浦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報