改訂新版 世界大百科事典 「バロス」の意味・わかりやすい解説
バロス
João de Barros
生没年:1497-1562
ポルトガルの歴史家。宮廷役人の子として生まれ,宮廷で育てられ教育を受けた。高級官吏としても有能であったが,すぐれた文筆家でもあり,ポルトガル・ルネサンス期の典型的な知識人でもあった。〈歴史家〉としての彼の主著は《アジア史》4巻(1552-1615)である。これは,彼自身の構想になる膨大な百科全書的作品の一部をなすはずのものであった。その目的は東洋におけるポルトガル人の事績をたたえる記念碑たらしめることであり,ポルトガル人による東洋進出はイベリア半島における国土回復戦争の延長線上にある〈十字軍運動〉であるとする主張に立っている。また〈教育者〉としての彼には《ポルトガル語文法》(1540)がある。これはオリベイラFernão de Oliveira(1507?-81ころ)の《ポルトガル語文法》(1536)と並んで,16世紀のポルトガル語を知るうえで不可欠なものである。ほかに《皇帝クラリムンド年代記》(1522),《ロピカプネフマ》(1532)などがある。
執筆者:池上 岑夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報