改訂新版 世界大百科事典 「パンパスジカ」の意味・わかりやすい解説
パンパスジカ
pampas deer
Odocoileus bezoarticus
偶蹄目シカ科の哺乳類。雄が三つに枝分かれした(三尖の)角をもつ,南アメリカの草原(パンパス)にすむ優美なシカ。雌には角はない。体色は明るい赤褐色で,耳の内側と腹面は白色,尾の上面が暗褐色ないし黒色。雄には上あごの犬歯がある。ブラジル,パラグアイ,アルゼンチンに分布する。体長110~130cm,肩高70~75cm,尾長10~15cm。森林や山岳地帯にはふつう入らず,開けた草原に5~15頭からなる小さな群れですむ。おもに夜間に採食し,朝方日光浴や水浴びをした後,昼間は茂みに入って身を横たえ,休息する。交尾期は冬で,ペアまたは単独で過ごす。雌はふつう9~11月に群れを離れて1子を生む。アルゼンチンのパンパ(パンパス)には,かつてごくふつうに見られたというが,現在では個人所有の保護区にわずかの群れが残るのみとなっている。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報