日本大百科全書(ニッポニカ) 「ひよんどり」の意味・わかりやすい解説
ひよんどり
静岡県浜松市北区引佐(いなさ)町川名(かわな)の薬師堂で1月4日に行われる修正会(しゅしょうえ)の行事をとくにこの名称でよぶ。もとは正月8日の行事であったので、八日堂ともいう。近在の寺野(てらの)ほかの「おこない(おくない)」と同系のもので、寺野でも1月3日に行われ、ひよんどりといっている。ほかにも静岡市葵(あおい)区井川にひよんどり、静岡県榛原(はいばら)郡川根本町に「ヒヨウドリ」と称する正月の行事があるが内容は異なる。川名のひよんどりは近在のおこないと同様、猿楽(さるがく)系、神楽(かぐら)系、田遊(たあそび)ほかの種々芸能を包含して構成され二十数番が伝わる。堂内の祭りに入る前に、薬師如来(やくしにょらい)に献上する松明(たいまつ)の堂内参入を裸の青年たちが激しく阻止するが、ひよんどりの名称はこの火踊りのさまに由来するともいわれている。
[高山 茂]