薬師如来(読み)ヤクシニョライ

デジタル大辞泉 「薬師如来」の意味・読み・例文・類語

やくし‐にょらい【薬師如来】

《〈梵〉Bhaiṣajyaguruの訳》東方浄瑠璃じょうるり世界教主。12の大願を立てて、人々の病患を救うとともに悟りに導くことを誓った仏。古来医薬の仏として信仰される。像は通例右手施無畏印せむいいんを結び、左手薬壺やっこを持つ。脇侍きょうじ日光菩薩月光菩薩眷属けんぞくとして十二神将が配される。薬師瑠璃光如来薬師仏

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精選版 日本国語大辞典 「薬師如来」の意味・読み・例文・類語

やくし‐にょらい【薬師如来】

  1. ( [梵語] Bhaiṣajyaguru の訳語 ) 仏語。東方浄瑠璃世界の教主。一二の大願を発して、衆生の病苦などの苦患を救い、身体的欠陥を除き、さとりに至らせようと誓った仏。古来医薬の仏として尊信される。その像は、左手に薬壺または宝珠を持ち、右手に施無畏(せむい)の印を結ぶのを通例とする。日光・月光の二菩薩を脇士とし、十二神将を護法神とする。薬師瑠璃光如来。薬師瑠璃光仏。薬師仏。薬師。
    1. 薬師如来〈図像抄〉
      薬師如来〈図像抄〉
    2. [初出の実例]「蓼原の里の中の蓼原堂に、薬師如来の木像在り」(出典:日本霊異記(810‐824)下)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「薬師如来」の意味・わかりやすい解説

薬師如来
やくしにょらい

仏教で、東方浄瑠璃(じょうるり)世界の仏をいう。サンスクリット語バイシャジュヤグルBhaiajyaguruの訳。正確には薬師瑠璃光如来(にょらい)という。かつて菩薩(ぼさつ)行を行じ、十二の願(がん)を発し、それを完成したといわれ、衆生(しゅじょう)の病と苦しみを癒(いや)し、救うことができるとされる。薬師如来については『薬師経』に説かれている。その十二の願とは、第一は衆生をことごとく薬師如来のごとくにすること、第二は迷いの衆生をすべて開暁(かいぎょう)させること、第三は衆生の欲するものを得させること、第四は衆生をすべて大乗に安立させること、第五は三聚戒(さんじゅかい)を備えさせること、第六はいっさいの障害者に諸根を完具させること、第七はいっさいの衆生の病を除くこと、第八は転女成男(てんにょじょうなん)させること、第九は正しい見解を備えさせること、第十は獄にある衆生を解脱(げだつ)させること、第十一は飢渇(きかつ)の衆生に上食を得させること、第十二は衣服に事欠く衆生に妙衣を得させることである。願にみられるごとく、薬師如来は人々に現世の利益(りやく)を与えるという色彩が強いため、中国、日本では古来、薬師信仰が盛んであった。中国では『薬師経』は致福消災の経と規定されている。日本では法隆寺薬師寺の薬師仏にみられるごとく造像が盛んに行われた。その形像は左手に薬壺(やっこ)を持つのを特徴とするが、一定していない。日光(にっこう)・月光(がっこう)菩薩(ぼさつ)を脇侍(きょうじ)とする。眷属(けんぞく)には護法神の十二神将を配する。『薬師如来瑞応伝(ずいおうでん)』には江戸時代の薬師信仰の盛んなさまをみることができる。民間では眼病などの治療に効験があると信じられた。

[由木義文]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「薬師如来」の意味・わかりやすい解説

薬師如来
やくしにょらい
Bhaiṣajyaguru

詳しくは薬師瑠璃光如来といい,大医王,医王善逝 (ぜんぜい) とも呼ばれる。菩薩としての修行時代に 12の本願を立て,それが達成されないかぎり仏にならないと誓った。その本願とは衆生の病気をなおして災難をしずめ,苦しみから救うというもので,薬師如来の名の起源となった。現世利益を与える仏として古くから信仰を受けたが,ほかの如来と異なり『薬師経』以外2,3の経典に散説されるだけで,その成立の時代や場所は未詳。形像は普通,右手を施無畏印 (せむいいん) ,三界印,施願印などに結び,左手には薬壺 (異説では鉢) を持つ像と,持たずに下に垂らすか膝の上に置く像とがある。日光・月光菩薩を脇侍とし,眷属には十二神将をとる。日本では7世紀頃から信仰され,以後盛んに造像された。薬師寺など薬師如来を主尊とする古寺も多い。著名な遺品としては,法隆寺金堂の銅造の坐像 (飛鳥時代) ,奈良薬師寺金堂の銅造の坐像 (白鳳時代) ,奈良新薬師寺本堂の木造の坐像 (天平時代末期) などがある。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「薬師如来」の解説

薬師如来
やくしにょらい

医王仏とも。薬師瑠璃光(るりこう)如来の略称。東方瑠璃光浄土の主。所願成就・持戒清浄・病苦除去・転女成男(てんにょじょうなん)・息災離苦などの12の誓願を発して,衆生(しゅじょう)を救おうとした仏。左手に薬壺(やくこ)または宝珠(ほうじゅ)をもち,右手に施無畏(せむい)印を結ぶ。日光・月光両菩薩を脇侍(きょうじ)とし十二神将を護法神とする。治病延命や不老長寿を願う対象として信仰された。奈良薬師寺は,天武天皇が皇后(持統天皇)の病気平癒を祈願して建立に着手したもの。現存の造形としては,京都日野の法界寺の薬師堂,高知県大豊町の豊楽(ぶらく)寺薬師堂などの建造物,奈良薬師寺金堂の薬師三尊像,新薬師寺の本尊薬師如来と周囲の十二神将像,京都神護寺の薬師如来立像などが有名。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「薬師如来」の解説

薬師如来 やくしにょらい

大乗仏教の仏。
東方の浄瑠璃(じょうるり)世界の主。除病安楽,息災離苦など12の誓願をおこし,生あるすべてのものをすくうという。ふつう左手に薬壺をもち,右手は施無畏(せむい)印をむすぶ。脇侍(きょうじ)に日光・月光菩薩(がっこうぼさつ)。十二神将にまもられる。日本では天武天皇9年(680)ごろから薬師信仰がさかんになった。奈良薬師寺,京都神護寺の像などが有名。薬師瑠璃光如来の略。別名に医王仏。

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百科事典マイペディア 「薬師如来」の意味・わかりやすい解説

薬師如来【やくしにょらい】

薬師

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世界大百科事典(旧版)内の薬師如来の言及

【少彦名命】より

…近世以降,大阪の薬問屋街,道修町(どしようまち)では薬種の守護神として少彦名神社をまつり,毎年11月には全店休業しての大祭が今日でも行われている。また薬師信仰の普及のなかで,スクナビコナは薬師如来と習合されてゆくが,857年(天安1)2神をまつる常陸国大洗磯前(いそざき)神社,酒列(さかつら)磯前神社(ともに式内社)が,官命により〈薬師菩薩名神〉と加号された(《文徳実録》)のはその早いあらわれといえる。【阪下 圭八】。…

※「薬師如来」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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