修正会(読み)シュショウエ

デジタル大辞泉 「修正会」の意味・読み・例文・類語

しゅしょう‐え〔シユシヤウヱ〕【修正会】

毎年正月に諸宗寺院で行われる法会。その年の吉祥を祈るもの。すしょうえ。

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精選版 日本国語大辞典 「修正会」の意味・読み・例文・類語

しゅしょう‐えシュシャウヱ【修正会】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。毎年正月、諸宗の寺院で修する年始の法会。その年の天下平安、玉体安穏などを祈って読経する。しゅしょう。しゅせい。しゅうせい。しゅせいえ。
    1. [初出の実例]「可高寺修正会、且拝雲堂五百羅漢之像」(出典:碧山日録‐長祿三年(1459)正月四日)

しゅうせい‐えシウセイヱ【修正会】

  1. 〘 名詞 〙しゅしょうえ(修正会)

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改訂新版 世界大百科事典 「修正会」の意味・わかりやすい解説

修正会 (しゅしょうえ)

毎年正月の始めに3日ないし7日間にわたって,国家・皇室安泰五穀豊穣などを祈願する法会。修正月会,略して修正ともいう。修正会は何経をよりどころとして行われたのか明記するものがないが,一つには《金光明経》《金光明最勝王経》による年始の仏事として恒例化したものと,いま一つには767年(神護景雲1)正月の国分寺官大寺における吉祥天悔過(けか)が年中行事化したものとがある。

 前者は《金光明経》とか《最勝王経》の読誦による祈願で,その伝統は古く,694年(持統8)5月の詔によると,正月の上弦(7,8日)に諸国国衙で行われるようになった。728年(神亀5)以降,《最勝王経》の配布によって両経が読誦され,やがて国分寺の整備とともに,749年(天平勝宝1)正月には,元日より7日にわたって寺々で年頭の仏事として読誦され,平安時代に修正会として定着した。例えば東大寺では元日より7ヵ日夜,講堂で行われ,その供米は24石余,油1斗7升を要し,舞楽なども演ぜられた。後者の吉祥天悔過の修正会は,吉祥天女像本尊として,天下太平・五穀成熟・万民快楽を祈願した仏事で,771年(宝亀2)正月に一時中止されたが,翌年11月に復活して正月の7日間に行うことが恒例化され,諸大寺,国分寺で定着化するにいたった。奈良薬師寺の場合は南都三会(さんえ)の一つである最勝会が3月に行われるにいたって,吉祥天悔過が〈修正吉祥行法〉として修正会となり,東大寺にあっては大和国国分寺時代からの最勝会が修正会,吉祥天悔過は〈吉祥御願〉と称せられ,吉祥堂で行われた。平安京にあっては,東寺の修正会は827年(天長4)正月の薬師悔過によるものとし,元日から7日までは食堂,8日は金堂,9日は塔,12日は二王堂,28日は講堂で修正会が行われたことが《東宝記》で判明する。また法成寺にあっては,元日は十斎堂,4日は阿弥陀堂,6日は薬師堂,7日は金堂で行われ,その間の費用が莫大な額になったことは《執政所抄》によってうかがうことができる。六勝寺などでも盛んに行われたことは《年中行事》で判明するが,法成寺,法勝寺の修正会には呪師(しゆし)と称する後世の猿楽者が〈走り〉という芸能を披露し,天皇,上皇をはじめ女院,公卿の賞玩に供した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「修正会」の意味・わかりやすい解説

修正会
しゅしょうえ

毎年正月に3日ないし7か日夜にわたり、天下泰平(たいへい)・五穀豊穰(ほうじょう)・万民快楽(けらく)などを祈願する仏会(ぶつえ)。起源は明らかでないが、759年(天平宝字3)以前より諸大寺で行われており、767年(神護景雲1)正月に諸国国分寺、官大寺などで、吉祥天悔過(きっしょうてんけか)が行われるに至り、初春の仏会として普及した。770年(宝亀1)にいったん中止されたが、3年後に再興された。衆僧が罪障を懺悔(さんげ)し、代償に仏果を得ようと祈る仏会を悔過というが、吉祥天女を本尊とする場合は吉祥(天)悔過、薬師如来(にょらい)の場合は薬師悔過などと称している。東大寺法華堂(ほっけどう)と法隆寺に伝わる吉祥天女立像は、この悔過の本尊である。薬師寺の修正会は772年より、毎年不退の行法として中世まで伝えられ、東寺(教王護国寺)・西寺のそれは薬師悔過で、827年(天長4)より行われたという。平安中期には法成寺(ほうじょうじ)、法勝寺(ほっしょうじ)の諸堂でも盛んに行われ、呪師(じゅし)走りや雑芸が行われ、芸能に大きな影響を与えた。

[堀池春峰]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「修正会」の意味・わかりやすい解説

修正会
しゅしょうえ

仏教儀式名。正月に執行される悔過 (けか) の行事。中国の年始の儀式を起源とし,護国仏教思想と春迎えの民間習俗が混合したもので,古くから官大寺で行われ,平安中期以降には諸大寺で行われるようになった。旧年の罪障や穢れを懺悔 (さんげ) の行によって祓い,新年の平安・豊穣を祈る。

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世界大百科事典(旧版)内の修正会の言及

【後戸】より

…法会儀礼のなかで後戸の神をまつる呪法は芸能化し〈後戸の猿楽〉という呼称が示すように中世芸能誕生の舞台となった。能楽の翁を後戸の神(宿神・守宮神)といい修正会(しゆしようえ)などの延年に登場するが,古来,修正会に後戸から鬼が出現するのもまた普遍的であり,ともに後戸の宗教性を象徴している。【木下 密運】。…

【悔過作法】より

…主尊の違いによって,薬師悔過,阿弥陀悔過,十一面(観音)悔過,如意輪(観音)悔過,吉祥悔過,舎利悔過などの種類があるが,その法要の構成には共通する部分が多い。旧正月,旧2月に当たる時期に春迎えの仏事として行われ,修正会(しゆしようえ)・修二会(しゆにえ)の法要としてつとめるのが普通で,数日にわたり,また1日数回にわたる例が多い。もっとも大規模なのは東大寺の修二会で,上七日(じようしちにち)・下七日(げしちにち)の14日間にわたり,毎日6回,日中・日没(にちもつ)・初夜・半夜・後夜・晨朝(じんぢよう)の六時に相当する悔過作法が行われる。…

【呪師猿楽】より

…平安時代,寺院に属し,法会の際に呪師の役を代行した猿楽。東大寺,興福寺等の大寺では,春を迎え,新しい年の太平を祈る修正会(しゆしようえ),修二会(しゆにえ)の勤行の際,法呪師(呪師)と呼ぶ役僧が,仏法守護の神々を勧請して,結界,鎮壇,鎮魔,除魔等の密教的な行法を受け持った。行法の動作は激しく,鈴を鳴らし,太刀を振り,足早に小刻みに走り回った(走り)らしい。…

【寺事】より

…宗派が異なる場合はもちろん,同一宗派でも同一の行事に異なる法要を勤修する場合がある。たとえば,釈迦涅槃(ねはん)の供養を目的とする涅槃会に,講経論義法要,講式法要あるいは読経法要などが,寺々の事情と判断で勤修されたり,年の初めの祈願を目的とする修正会(しゆしようえ)に,四箇法要,悔過法要,大般若転読法要などがそれぞれに勤修される類である。また反面,多宗派に共通の法要形式を同一の目的で勤修する場合でも,行事の名称は必ずしも同一とはならない。…

※「修正会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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