日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘスペロルニス」の意味・わかりやすい解説
ヘスペロルニス
へすぺろるにす
Hesperornis
鳥綱ヘスペロルニス目ヘスペロルニス科に属する化石鳥の総称。この科Hesperornithidaeの仲間は中生代白亜紀の鳥で、アメリカ合衆国やカナダで発掘された数属約10種が知られている。形態は現生のアビ類に近く、アビのように強力な足をもった海生の潜水鳥である(淡水産もある)。大きさは、全身骨格が発見されているヘスペロルニス・レガリスHesperornis regalisは全長約1.6メートル、小形種は大形のカイツブリ大と推定される。翼は非常に小さく、胸骨の竜骨突起もほとんどなく、飛ぶことはまったくできなかった。骨格は現生の鳥類にきわめて近いが、歯をもっていた点が異なる。歯の存在は鳥類では原始的な特徴で、新生代の鳥類はすべて歯をもっていない。習性もアビに近く、潜水して、おそらく魚類や甲殻類をとっていた。しかし、アビより群集性はいっそう強く、海岸や島に群集して集団繁殖していたらしい。
ヘスペロルニス目は、ヘスペロルニス科およびバプトルニス科Baptornithidaeよりなるが、後者もヘスペロルニスによく似た潜水鳥で、アメリカ合衆国やチリの白亜紀から知られている。
[森岡弘之]