日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘラザメ」の意味・わかりやすい解説
ヘラザメ
へらざめ / 篦鮫
軟骨魚綱メジロザメ目の科や属の総称、またはその1種の名称。ヘラザメ科Pentanchidaeは第1背びれが腹びれ上方またはその後方に位置すること、臀(しり)びれがあること、口が目の前端の下に位置すること、頭蓋骨(とうがいこつ)の眼窩(がんか)上部に庇(ひさし)がないことなどが特徴で、ヘラザメ属Apristurus、ナガサキトラザメ属Halaelurus、ヤモリザメ属Galeusなど11属からなる。そのうち、ヘラザメ属は吻(ふん)が扁平(へんぺい)で、臀びれと尾びれが接することが特徴で、約40種からなり、日本近海には約9種が知られている。
種としてのヘラザメA. platyrhynchus(英名spatula-snout catshark)は第1背びれが腹びれ基底より後ろから始まること、胸びれと腹びれの間が短いこと、臀びれ基底が非常に長いことなどで特徴づけられる。深海性で、大きくても全長1メートル程度で、生殖方法は短期型単卵生である。トロール網などでときに大量に漁獲され、練り製品の原料などにされる。南日本から、台湾、フィリピン、オーストラリアなどの海域に分布する。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、低懸念(LC)とされている(2021年9月時点)。
[仲谷一宏 2021年10月20日]