日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホ・スァン・フゥオン」の意味・わかりやすい解説
ホ・スァン・フゥオン
ほすぁんふぅおん / 胡春香
(1768―1839)
ベトナム黎(れい)朝末期、阮(げん)朝初期時代に活躍した天才女流詩人。幼くして父を失い、母の手で教育されて、早くから優れた詩才を発揮し独自のスタイルをつくりだす。さる地方高官(知府)の側室となり、その高官の死後、ふたたび他の男の側室に身を置くなど数奇を極める生活が、彼女の感性を豊かにし、浪漫(ろうまん)主義的傾向を促したといわれる。しばしば庶民生活の現実をモチーフに取り上げ、自然現象、花鳥風月に託した巧みな比喩(ひゆ)で歌い上げた。なかにはエロティシズムに通じる作品もあり、いまなおベトナム庶民の間で広く愛唱されている。
[竹内与之助]