改訂新版 世界大百科事典 「ボアザン兄弟」の意味・わかりやすい解説
ボアザン兄弟 (ボアザンきょうだい)
フランスの航空先駆者。兄はガブリエルGabriel Voisin(1880-1973),弟はシャルルCharles Voisin(1882-1912)。兄弟ともヌービル・シュル・ソーヌの生れ。1905年にパリ郊外のビヤンクールに世界最初の飛行機工場を建てて,彼らの設計あるいは注文主と協同設計で飛行機を製作した。これはライト兄弟初飛行のわずか2年足らず後である。兄弟の機体は複葉推進式で,前翼(昇降舵)と尾翼(方向舵つき)をもっていたが,補助翼はなかった。上下主翼間には安定用のつもりでカーテン(垂直板)を取り付けたが,旋回はバンク(傾斜)せずに方向舵だけで行う方式で,横滑りを伴う危険な運動であったため,事故は多かった。ボアザン機はかなり使われたが,H.ファルマンが補助翼をつけた飛行機を製作し,その性能が認められるようになるとともに主流からはずれ,兄弟の会社は第1次世界大戦初期に軍用機を生産したものの,そのころ兄弟の影響はすでに消えていた。
執筆者:佐貫 亦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報