ボスコレアーレの遺宝(読み)ボスコレアーレのいほう

改訂新版 世界大百科事典 「ボスコレアーレの遺宝」の意味・わかりやすい解説

ボスコレアーレの遺宝 (ボスコレアーレのいほう)

ベスビオ山南山ろく,ポンペイの北約3kmにあるボスコレアーレBoscorealeから19世紀末に出土した帝政ローマ時代の金属器。現在,ルーブル美術館,ナポリ国立考古博物館などに収蔵されている。遺宝は主に青銅製,銀製の食器から成るが,私的発掘であったため正確な数は不明。銀器には〈玉座にあるアウグストゥス〉と〈ティベリウス凱旋〉を打出しによって表した把手付碗や,アフリカもしくはエジプトの擬人像(もしくはクレオパトラ)を表す銀皿などがあり,アウグストゥス時代の美術を知る資料として貴重な位置を占めている。出土地は,ボスコレアーレ近くの〈セテ・テルミニの別荘〉である。遺宝の豪華さに比べ貧相な別荘であるため,その所有者はボスコレアーレの〈ファンニウス・シュニストルFannius Synistorの別荘〉,もしくはポンペイの〈秘儀荘Villa dei Misteri〉のそれと同一人物とみなされている。なお,〈ファンニウス・シュニストルの別荘〉は農作業用の区画と所有者の住居区画から成り,後者の部屋は豪華なポンペイ第2様式の壁画で装飾されていた。それらは現在,メトロポリタン美術館,ナポリ国立考古博物館等に収蔵されている。
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世界大百科事典(旧版)内のボスコレアーレの遺宝の言及

【ローマ美術】より


【工芸】
 ローマの工芸の特徴は,広範な領土から採れる貴金属や貴石・宝石を潤沢に使用した点にある。それは,たとえばボスコレアーレから出土した帝政期の多数の金属器(いわゆる〈ボスコレアーレの遺宝〉)にうかがえる。ヘレニズム時代に盛んとなった彫玉は,ローマ貴族の豪勢な生活文化と一致して,《ゲンマ・アウグステア(アウグストゥスの宝玉)》《フランスのカメオ》などの優品を生んだ。…

※「ボスコレアーレの遺宝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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