化学辞典 第2版 「ポリクロム酸塩」の解説
ポリクロム酸塩
ポリクロムサンエン
polychromate
クロム酸塩は,弱酸性水溶液では同族のMoやWと異なり,Cr2O72-以上のポリ酸は生成しない.しかし,強酸性では三クロム酸塩,四クロム酸塩が生成する.しかし,それ以上大きいポリ酸は生成しない.【Ⅰ】三クロム酸塩(trichromate):MⅠ2Cr3O10(M = Na,K,Rb,Cs,NH4,アルカリ土類金属,Cu,Ni,Znなど).K2Cr3O10は二クロム酸カリウム水溶液に三酸化クロムを加えるか,K2Cr2O7濃水溶液に濃硝酸を加えると生成する.暗赤色の単斜晶系結晶.[O3Cr-O-Cr(=O)2-O-CrO3]2- を含む.各CrO4は正四面体型で,頂点のO原子を共有してつながる.Cr-O約1.6 Å(末端),1.7~1.8 Å(架橋).潮解性で,水に易溶,アセトンに可溶.乾燥空気中では安定であるが,湿った空気中ではK2Cr2O7とCrO3に分解する.[CAS 33692-14-7]【Ⅱ】四クロム酸塩(tetrachromate):MⅠ2Cr4O13(M = K,Na,Rb,Cs,NH4,Ca,Mg,Cuなど).K2Cr4O13は,K2Cr3O10の濃水溶液に濃硝酸を加えると得られる.褐赤色の単斜晶系結晶.酸イオンは,4個の正四面体型のCrO4が,互いに頂点のO原子を共有して一列に並んだ形.水に易溶.水溶液中では分解してK2CrO7とCrO3を生じる.[CAS 33692-15-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報