日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポリ酸」の意味・わかりやすい解説
ポリ酸
ぽりさん
polyacid
オキソ酸のうち、酸基が縮合して2核以上の多核錯イオンとなっている陰イオンを含む酸をいう。縮合酸、多重酸などともいう。周期表中第5~6族および第13~16族などの元素、とくにホウ素B、ケイ素Si、リンP、ヒ素As、硫黄S、セレンSe、テルルTe、バナジウムV、ニオブNb、タンタルTa、クロムCr、モリブデンMo、タングステンWなどで多くみられる。ポリ酸のうち、1種類の中心原子しか含まないものをイソポリ酸isopolyacid、2種以上の中心原子を含むものをヘテロポリ酸heteropolyacidといっている。
たとえば、四ホウ酸H2B4O5(OH)4、三リン酸H5P3O10、cyclo-三リン酸H3P3O9、二クロム酸H2Cr2O7、七モリブデン酸H6Mo7O24などがイソポリ酸であり、その構造は次のようなイオンを含んでいる。すなわち、四ホウ酸イオンは、押し広げていくと の(1)のような構造で、四面体型4配位と平面型3配位のホウ素が二つずつ存在する。三リン酸イオンや二クロム酸イオンは、四面体のPO4やCrO4を酸素原子で架橋して連なったものである( の(2)(3))。七モリブデン酸イオンは通常パラモリブデン酸イオンとよばれ、正八面体のMoO6がその稜(りょう)を共有し、七つ縮合して の(4)のように集まったものである。
これに対して、ドデカモリブドリン酸(通称リンモリブデン酸)H3[PMo12O40]、ドデカタングストケイ酸(通称ケイタングステン酸)H3[HSiW12O40]などでは、正八面体のMoO6やWO6の稜を共有して縮合し、つながったポリ酸イオンの中心にリンあるいはケイ素が入り込んで四面体型のPO4やSiO4をつくっているヘテロポリ酸イオンを含んでいる。
[中原勝儼]