ポリスルファン

化学辞典 第2版 「ポリスルファン」の解説

ポリスルファン
ポリスルファン
polysulfane

枝分れしていない硫黄原子鎖の両端にH原子をもつ化合物HSnH(n ≧ 2)の総称(IUPAC定義).HS2Hは除外されることもある.多硫化水素(学術用語方式),ポリ硫化水素ということもある.n = 2~8のものは単離されている.ポリ硫化ナトリウムNa2Sn(n ≧ 2)水溶液に,低温でHClを反応させるとn = 4~6, > 6のポリスルファンを生じる.これを原料として,クラッキングを伴う減圧蒸留法でn = 2~5のものが単離される.nの大きいポリスルファンは,nの小さいものにジクロロポリスルファンを反応させると得られる.

Cl-Sn-Cl + 2H2S2 = 2HCl + H2Sn+4

H2Snは共有結合化合物で,両端のH原子の間をn個のSがつながったジグザグ鎖で結んでいる.S-S2.00~2.11 Å.∠S-S-S110°(n > 2).

室温ではいずれも淡黄色の油状液体で,刺激臭があり,放置すると分解する.H2S(pKa1 = 7)より強い酸で,pKa1n = 2で5,5で3.2のように,nとともに減少する.水溶液も不安定で,ことにアルカリ性では分解が速く,H2Sと S8 になる.これらの塩に相当するポリ硫化物は,アルカリ金属塩ほか,多くの金属の塩が得られている.いずれも鎖状の [Sn]2- をもつ.両端のH原子をハロゲンで置換した化合物も得られている.ジクロロポリスルファンCl-Sn-Clは,n = 2~8のものが単離されている.有機化合物でも,H2Snの両方または片方のH原子を炭化水素基(または他種の基)で置換したものが得られる.ジエチルトリスルファンC2H5-S-S-S-C2H5,メチルテトラスルファンCH3-S-S-S-SHなど.[CAS 13465-07-1:H2S2][CAS 13845-23-3:H2S3][CAS 13845-25-5:H2S4][CAS 12026-49-2:H2S8]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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