有機化合物(読み)ゆうきかごうぶつ(英語表記)organic compound

  • ゆうきかごうぶつ イウキクヮガフブツ
  • ゆうきかごうぶつ〔イウキクワガフブツ〕
  • 有機化合物 organic compound

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

炭素化合物と同義。ただし二酸化炭素 CO2 ,一酸化炭素 CO ,シアン化水素 HCN ,二硫化炭素 CS2 ,四塩化炭素 CCl4 ,炭酸塩などは,慣習上無機化合物として取扱われる。しかし,炭酸ジエチル (C2H5O)2CO ,ギ酸 HCOOH ,アセトニトリル CH3CN ,エチルキサントゲン酸 C2H5O(CS)SH ,クロロホルム CHCl3 などの構造からわかるように,これらの有機化合物は前記の化合物から誘導されたものとみることができる。古くは,有機化合物は,有機体の生命力によってのみつくられる化合物と考えられていたが,F.ウェーラーが生体とはまったく無関係な無機化合物であるとみられていたシアン酸アンモニウム NH4OCN から,純然たる有機化合物とみられていた尿素 (NH2)2CO を合成することに初めて成功 (1828) してから,相次いで多数の有機化合物が無機化合物から合成され,有機化合物とは炭素の化合物とされるようになった。現在知られている無機化合物の数は約 10万であるのにし,有機化合物の数は 100万を上回る。これらの 90%以上は合成化合物であり,残りが動物,植物,菌類,微生物などの生物,および石炭,石油などから分離された天然化合物である。合成有機化合物の多くは石炭や石油を原料としてつくられ,その数は今後も限りなく増加するであろう。これらのうちには合成繊維,プラスチック,医薬品,農薬など天然には存在しない有用なものが数多くある。また天然物に含まれる有機化合物のうちには蛋白質,脂肪,炭水化物,香料,ある種の医薬品など,現在まだ人工的に合成されていない化合物も多数存在する。

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デジタル大辞泉の解説

炭素を含む化合物総称。ただし、二酸化炭素炭酸塩などの簡単な炭素化合物習慣無機化合物として扱うため含めない。元来は有機体すなわち生物に起源を有する化合物ので呼ばれ、生命力によって作られるとされていた。1828年に尿素が人工合成され、無機物から合成できることがわかった。⇔無機化合物

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百科事典マイペディアの解説

炭素を成分とする化合物の総称。無機化合物に対。ただし非常に簡単な炭素化合物,たとえば酸化物(CO2,CO),シアン化物(KCN),炭化物(CaC2),炭酸塩(K2CO3)などは無機化合物に含める。有機化合物は有機体(生物)に起源を有する化合物の意で,かつては,生命力によってのみつくられると考えられていたが,1828年のウェーラーによる尿素合成以来本質的には無機化合物と区別されなくなった。炭素は共有結合によって鎖状または環状のさまざまな構造の化合物(鎖式化合物環式化合物)をつくり,異性体の種類も多く,現在までに知られている有機化合物の数は100万以上といわれている。その多くは炭素,水素,酸素,窒素の4元素のみからなり,他の構成元素としては硫黄,リン,ハロゲン元素などがあり,ケイ素を含むものを有機ケイ素化合物,金属を含むものを有機金属化合物という。生命現象に重要な役割をするタンパク質,核酸,炭水化物,脂質などは有機化合物に属する。
→関連項目クロスカップリング有機化学

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世界大百科事典 第2版の解説

炭素を含む化合物。単に有機物ということも多い。無機化合物(無機物)と対をなす語。もともとは有機物は有機体すなわち生命が,生命に固有な力(生気)を用いて初めてつくり出すことができる物質,無機物は生命の助けを借りなくてもつくりうる物質と定義されたことによる。それ以前,1675年にレムリーNicolas Lemery(1645‐1715)が書いたベストセラー教科書《化学大系Cours de Chymie》においても,物質はとれたところによって鉱物性,植物性,動物性に分類され,そのため多くの有機化合物が鉱物質に分類された。

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大辞林 第三版の解説

炭素を含む化合物(二酸化炭素や金属の炭酸塩などの少数の例外を除く)の総称。炭素原子からなる骨格を構造の基本として、決まった分子構造をもつ。生物体を構成する重要な要素で、ウェーラーによる尿素の合成(1828年)以前は、生命力によってのみつくられるとされていた。現在、約一〇〇〇万の種類が知られ、日用品・工業製品・医薬品などの素材として広く用いられる。 ⇔ 無機化合物

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

一酸化炭素、二酸化炭素、炭酸塩、シアン化水素とその塩、二硫化炭素など少数の簡単な化合物を除く炭素化合物の総称である。単に有機物ということも多い。最初に「有機化合物」という語を使ったのはスウェーデンのベルツェリウスで1806年のことであるが、当時は、天然の動植物界から生体成分、排出物、発酵生成物などとして得られる化合物が、鉱物界から得られる無機化合物(無機物)と本質的に異なり、生物の生命力によりその器官organでつくられると考えられていたので、有機organicの名が与えられた。有機化合物は生命力によって生成し、実験室で無機化合物からつくることは不可能であると信じられていたが、1828年にドイツのウェーラーが、無機化合物として知られていたシアン酸アンモニウムを加熱して有機化合物である尿素を合成したので、有機化合物と無機化合物の本質的な相違はなくなった。それ以前にフランスのラボアジエが、有機化合物が炭素、水素を含むことを燃焼の実験により示していたので、有機化合物は炭素化合物であるとの考え方が確立されてきたが、ラボアジエ以前から無機化合物とされてきた酸化炭素、炭酸塩、シアン化合物など少数の炭素化合物は現在でも無機化合物として分類されている。
 有機化合物の基本は炭化水素であり、炭素と炭素、炭素と水素の共有結合で構成されている。炭素どうしは共有結合により多数が結び付いて鎖状や環状の骨格をつくれるうえ、炭素‐炭素の結合には単結合のほかに二重結合や三重結合も可能であるので、炭素と水素の化合物である炭化水素だけでも多数存在する。そのうえ、炭化水素骨格のいろいろな位置を酸素、窒素、硫黄(いおう)などのいろいろなヘテロ原子を含む官能基で置換するとさらに多数の誘導体ができるので、有機化合物の数は非常に多数となり、数百万が知られているともいわれ、現在でもその数は増加しつつある()。有機化合物といっても、その種類により性質はかなり異なっているが、一般に可燃性であり、無機物に比べて融点が低く、水に溶けにくくアルコール、エーテルなどの有機溶媒に溶けやすいという共通の性質をもっている。数多い有機化合物の一つ一つにその化学構造に対応して名前をつけるために、国際純正・応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)による有機化合物命名法が定められていて、これによると有機化合物を系統的に命名できる。[廣田 穰]
『飛田満彦、内田安三著『ファインケミカルズ 有機化合物の構造と物性』(1982・丸善) ▽神戸哲・高昌晨晴・斉藤光司著『わかりやすい有機化学――生体と材料のための有機化合物』(1994・講談社)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 炭素を含む化合物の総称。ただし、炭素の酸化物、硫化物、炭酸塩、シアン化物などは習慣上無機化合物として扱う。古くは生物体を構成する化合物をいい、生命力によってのみ作られると考えられていたが、無機化合物から有機化合物が合成されるようになってからは便宜的な区分となった。成分元素の種類は少ないが構造は複雑なものが多い。〔稿本化学語彙(1900)〕

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化学辞典 第2版の解説

炭素の酸化物や金属の炭酸塩など,少数の簡単なものを除いたすべての炭素化合物の総称.元来,物質は鉱物界より得られる無機化合物と動物,植物界より得られる有機化合物とに分類され,有機化合物は生命力を有する動物,植物の生体内でのみ,つくられると信じられていた.ところが,1828年F. Wöhler(ウェーラー)が,シアン酸カリウムと硫酸アンモニウムから尿素を合成して以来,次々に人工的に有機化合物が合成されるに及び,有機化合物に対する前記の考えは根拠のないものとなってしまった.合成技術の進歩に伴い,有機化合物と無機化合物の区別もかなり便宜的なものとなり,現在では構造や性質上の特徴から分類されることが多い.有機化合物は一般に可燃性であり,融点や沸点は低く,有機溶媒には易溶であるが,水に難溶もしくは不溶である.また,水に溶けても,電離するものは少ない.有機化合物の反応速度は,無機化合物の水溶液中のイオン反応のようにすみやかに起こることはまれで,加熱や光照射や触媒の作用により反応速度を大きくして行うことが多い.有機化合物の分類では,骨格構造による方法と官能基による方法が便利である.骨格構造では,まず,環式構造を含むか否かにより,環式化合物と鎖式化合物(脂肪族化合物)とに大別され,環式化合物はさらに,炭素原子以外の原子を含むかどうかにより,炭素環式化合物と複素環式化合物とに分類される.炭素環式化合物は,さらに,ベンゼン環を含む芳香族化合物またはベンゼン環を含まなくても芳香族性を示す非ベンゼノイド芳香族化合物と脂環式化合物とに分類される.

官能基による分類では,有機化合物のもっている官能基の種類により,炭化水素(R-H),アルコール(R-OH),エーテル(R-O-R′),アルデヒド(R-CHO),ケトン(R-CO-R′),カルボン酸(R-COOH),そのほかがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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