化学辞典 第2版 「ポリ硫化物」の解説
ポリ硫化物
ポリリュウカブツ
polysulfide
R-[S]n-R(n ≧ 2,R ≠ H)で表される硫黄原子鎖をもつ化合物の総称(IUPAC用語集).多硫化物ともいう.RS2Rは除外されることもある.[S]n は二価の陰イオンであるから,Rはアルカリ金属,NH4など一価のイオンと陽性の置換基.S2- を複数もつ塩,たとえばFe2S3もポリ硫化物(polysulfide)とよばれるので,化合物名で区別する必要がある.S32- をもつNa2S3は(三硫化)二ナトリウム(disodium(trisulfide)または三硫化(2-)ナトリウム(sodium trisulfide(2-)),S2- を3個もつFe2S3は硫化鉄(Ⅲ)(iron(Ⅲ) sulfide)またはトリス(硫化)二鉄(diiron tris(sulfide))[CAS 11126-12-8]である.[S]n2- は折れ線形鎖で,S-S2.03~2.15 Å.∠S-S-S107~110°.金属硫化物と硫黄を融解したり,硫黄は硫化アルカリ金属水溶液に易溶なので水溶液中で反応させてつくる.アルカリ金属塩は水に可溶であるが,二価またはそれ以上の原子価の金属の塩には水に不溶のものがある.水溶液は
Sn2- + 2H2O → H2Sn + 2OH-
の反応により強いアルカリ性を示す.ポリ硫化ナトリウムは硫化染料製造に使用される.無水の四硫化ナトリウムは有機シラン類の合成に広く用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報