片方(読み)カタエ

デジタル大辞泉 「片方」の意味・読み・例文・類語

かた‐え〔‐へ〕【片方/傍】

かたわら。そば。
「父の―を遠く離るる事の」〈露伴・風流魔〉
対になっているものの一方。片方。片側
高麗錦こまにしきひもの―ぞ床に落ちにける」〈・二三五六〉
一部分
「ほとりに松もありき。…―はなくなりにけり」〈土佐
かたわらの人。仲間。
「悪人の―は多く、善人の味方は少なし」〈仮・伊曽保・中〉
[類語]手近い程近い近い間近い間近じきすぐ至近近く目前鼻先手が届く指呼しこ咫尺しせき目睫もくしょうかん目と鼻の先わき片脇となり横手横合い手近卑近身辺かたわ手もと間近付近近辺近傍近所最寄り足元座右左右手回り身の回りそば近間界隈かいわい近回りそのへん四隣しりん隣組向こう三軒両隣りょうどなり

かた‐ほう〔‐ハウ〕【片方】

対になっているものの一つ。かたっぽ。かたっぽう。片一方。「手袋を片方なくした」
片側。「壁の絵が片方に傾いている」
対立する二つの立場の一方。「片方だけの意見を聞くわけにはいかない」
[用法]片方・一方――「片方(一方)の脚が痛い」などでは相通じて用いられる。◇「片方」は、二つあるうちの一つのほうで、手袋・靴・はしなどついになっている品物の場合は「片方」で言うことが多い。「片方の靴が脱げてしまった」。「かたぽう」はややくだけた、口語的な言い方。◇「一方」も、多くは二つあるうちの一つを指すが、方向・方角について言う場合、「山頂に立つと一方に海が見える」のように、いくつかあるうちの一つを指すこともある。この場合「片方」では置き換えられない。◇「一方通行」「一方的通告」「一方的勝利」なども「一方」だけの用法。◇類似の語に「他方」があり、「厳しい人柄だが、他方温かさも持っている」のように、「一方」と通じて用いられるが、文章語的である。
[類語]片一方一方片割れ他方一面半面他面側面片側片面片端一端一半一環片鱗一面的一方的サイド

かた‐かた【片方】

かたいっぽう。かたほう。
「雨を―の手に持った傘でけつつ」〈漱石道草
かたすみ。かたわら。
「―へ行きて、装束着て」〈宇治拾遺・五〉

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精選版 日本国語大辞典 「片方」の意味・読み・例文・類語

かた‐え‥へ【片方】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] 対になっているものの片方、または、あるものの一部分を指し示していう。
    1. 相対するものの一方。片方。
      1. [初出の実例]「高麗錦(こまにしき)紐の片(かたへ)ぞ床に落ちにける 明日の夜し来なむと言はば取り置きて待たむ」(出典万葉集(8C後)一一・二三五六)
      2. 「夏と秋と行きかふ空のかよひぢはかたへすずしき風や吹くらん〈凡河内躬恒〉」(出典:古今和歌集(905‐914)夏・一六八)
    2. あるものの中の一部分。一半。半分。なかば。
      1. [初出の実例]「ほとりに松もありき。五とせ六とせのうちに千とせや過ぎにけん、かたへはなくなりにけり」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月一六日)
    3. 物事の原因の一部分。事がらの責任の一半。幾つかの見方の中の一つの観点。
      1. [初出の実例]「『よにたぐひあるべき人にもあらずや』民部卿『かたへはみなしなり』」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
      2. 「あまり若くもてなし給へば、かたへは、かくも物し給ふぞ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
  3. [ 二 ] あるものからはずれた場所や、その場所にいる人。
    1. かたわら。かたはし。そば。はた。
      1. [初出の実例]「かたへの人、笑ふことにや有りけん、この歌にめでてやみにけり」(出典:伊勢物語(10C前)八七)
    2. ( かたわらにいる人の意で ) 仲間。朋輩同僚
      1. [初出の実例]「さて、かたへの人にあひて、『年比(ごろ)思ひつること、果し侍りぬ。聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ〈略〉』とぞ言ひける」(出典:徒然草(1331頃)五二)
    3. ( の意味が狭く限られて ) 同胞。はらから。兄弟
      1. [初出の実例]「かたへおはする人は、殊更にかくなむ、京の人はし給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蜻蛉)
    4. 中央からはずれているところ。隅のほう。かたわき。また、地方、田舎
      1. [初出の実例]「寔(まこと)に此所はかたへと申雪国にて、春ならでは山の形も見る事なし」(出典:浮世草子好色二代男(1684)二)

かた‐つ‐かた【片方】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「つ」は「の」の意 )
  2. 一つの物が、二つの側面を有する時の、どちらか一方。また、二つで一組になっている物のどちらか一方。片一方。片側。片方(かたかた・かたほう)
    1. [初出の実例]「かたつかたに絹廿疋、綾十疋、いまひとつかたには」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上上)
    2. 「賜はする扇どもの中に、かたつかたは日いとうららかにさしたる田舎(ゐなか)の館(たち)などおほくして、いまかたつかたは京のさるべき所にて、雨いみじう降りたるに」(出典:枕草子(10C終)二四〇)
  3. 当面問題になっているものの対極にあるもの。もう一つのほう。いまかたつかた。
    1. [初出の実例]「かひある御事を、見たてまつりよろこぶものから、かたつかたには、おぼつかなく悲しきことの、うち添ひて絶えぬを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
  4. ものの、端にかたよった所。かたすみ。かたわき。かたはし。かたほとり。
    1. [初出の実例]「この御たたう紙のかたつかたに うつせみのはに置く露の木がくれてしのびしのびにぬるるそでかな」(出典:源氏物語(1001‐14頃)空蝉)

かた‐かた【片方】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 一対のうちの一方。片一方。かたほう。かたつかた。
    1. [初出の実例]「めぐりもあばれ、門などもかたかたは倒れたる」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)三)
  3. かたわら。かたすみ。かたほうのはし。
    1. [初出の実例]「用意したりける足高哺貝(ほかい)三つの頸を調(こしらへ)入れて、片々(カタカタ)をあけて置きたれば」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)下)

かた‐ほう‥ハウ【片方】

  1. 〘 名詞 〙 二つそろって対になっているもののうちの一つ。一つのものを二つに分けたうちの一方。かたっぽ。かたっぽう。かたかた。⇔両方
    1. [初出の実例]「一片は片方のこと、一片の月と云は、夜更け方の月」(出典:唐詩選国字解(1791)五言古)
    2. 「をんどりが、にはで、けんかをしてゐました。そのうちに、かたほーのをんどりが、まけて」(出典:尋常小学読本(明治三六年)(1903)二)

かたっ‐ぽう‥パウ【片方】

  1. 〘 名詞 〙 「かたほう(片方)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「西国衆で有べいならば、おも舵取舵をわけて、かたっ方では昼寝をして、片方で防ぐべい所で、船をば乗かたぶけまいが」(出典:雑兵物語(1683頃)下)
    2. 「いつ見てもかたっぱうヒビのはひった近眼鏡」(出典:苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉五)

かたっ‐ぽ【片方】

  1. 〘 名詞 〙 「かたほう(片方)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「片(カタ)っ方(ポ)の対手めが同じく気が長いだ」(出典:滑稽本浮世床(1813‐23)初)

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