精選版 日本国語大辞典 「片方」の意味・読み・例文・類語
かた‐え ‥へ【片方】
〘名〙
[一] 対になっているものの片方、または、あるものの一部分を指し示していう。
① 相対するものの一方。片方。
② あるものの中の一部分。一半。半分。なかば。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「『よにたぐひあるべき人にもあらずや』民部卿『かたへはみなしなり』」
※源氏(1001‐14頃)葵「あまり若くもてなし給へば、かたへは、かくも物し給ふぞ」
[二] あるものからはずれた場所や、その場所にいる人。
※伊勢物語(10C前)八七「かたへの人、笑ふことにや有りけん、この歌にめでてやみにけり」
※徒然草(1331頃)五二「さて、かたへの人にあひて、『年比(ごろ)思ひつること、果し侍りぬ。聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ〈略〉』とぞ言ひける」
かた‐つ‐かた【片方】
〘名〙 (「つ」は「の」の意)
① 一つの物が、二つの側面を有する時の、どちらか一方。また、二つで一組になっている物のどちらか一方。片一方。片側。片方(かたかた・かたほう)。
※宇津保(970‐999頃)楼上上「かたつかたに絹廿疋、綾十疋、いまひとつかたには」
※枕(10C終)二四〇「賜はする扇どもの中に、かたつかたは日いとうららかにさしたる田舎(ゐなか)の館(たち)などおほくして、いまかたつかたは京のさるべき所にて、雨いみじう降りたるに」
② 当面問題になっているものの対極にあるもの。もう一つのほう。いまかたつかた。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「かひある御事を、見たてまつりよろこぶものから、かたつかたには、おぼつかなく悲しきことの、うち添ひて絶えぬを」
③ ものの、端にかたよった所。かたすみ。かたわき。かたはし。かたほとり。
※源氏(1001‐14頃)空蝉「この御たたう紙のかたつかたに うつせみのはに置く露の木がくれてしのびしのびにぬるるそでかな」
かた‐かた【片方】
〘名〙
① 一対のうちの一方。片一方。かたほう。かたつかた。
※宇治拾遺(1221頃)三「めぐりもあばれ、門などもかたかたは倒れたる」
② かたわら。かたすみ。かたほうのはし。
※金刀比羅本保元(1220頃か)下「用意したりける足高哺貝(ほかい)に三つの頸を調(こしらへ)入れて、片々(カタカタ)をあけて置きたれば」
かた‐ほう ‥ハウ【片方】
〘名〙 二つそろって対になっているもののうちの一つ。一つのものを二つに分けたうちの一方。かたっぽ。かたっぽう。かたかた。⇔両方。
※唐詩選国字解(1791)五言古「一片は片方のこと、一片の月と云は、夜更け方の月」
※尋常小学読本(明治三六年)(1903)二「をんどりが、にはで、けんかをしてゐました。そのうちに、かたほーのをんどりが、まけて」
かたっ‐ぽう ‥パウ【片方】
〘名〙 「かたほう(片方)」の変化した語。
※雑兵物語(1683頃)下「西国衆で有べいならば、おも舵取舵をわけて、かたっ方では昼寝をして、片方で防ぐべい所で、船をば乗かたぶけまいが」
※苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉五「いつ見てもかたっぱうヒビのはひった近眼鏡」
かたっ‐ぽ【片方】
〘名〙 「かたほう(片方)」の変化した語。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「片(カタ)っ方(ポ)の対手めが同じく気が長いだ」
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