知恵蔵 「マリーヌ・ルペン」の解説
マリーヌ・ルペン
1968年、ジャン・マリの三女としてパリ郊外に生まれる。8歳の時、父を狙った爆弾テロで自宅アパートを破壊され、学校でも極右政治家の娘としていじめに遭ったという。パリ第2大学で刑法を専攻し、弁護士資格を取得。86年にFNに入党し、党の法務を担当した。その後2003年にFNの副党首となり、父が07年に出馬した大統領選では選挙対策責任者となった。この頃からメディアへの露出も増え、気さくな人柄と弁舌の巧みさから、FNの新しい顔として注目されるようになった。この間、04年には欧州議会議員にも選出されている。
11年、父に代わってFN党首に選出されると、極右政党のイメージ刷新に乗り出し、支持層の拡大をはかった。党員に人種差別や親ファシズム、ホロコーストを容認するような発言を禁じ、15年には問題発言をやめない父も除名処分にした。経済面でも、国家主導によるドゴール流の経済政策を掲げ、父の時代の自由主義路線から保護主義路線へと転換。大統領選では「フランス第一」を掲げ、EUからの離脱、通貨フランの復活、国境警備の強化、移民の制限、NATOの軍事部門からの撤退などを前面に出した。一方、防衛予算の引き下げ、週労働時間35時間制の維持、年金支給開始年齢の引き下げといったリベラルな公約も掲げた。また、旧来の保守層が反対する妊娠中絶の権利も認め、同性愛にも寛容といわれる。
若い頃は夜遊び好きで、「ナイトクラバー」というあだ名があったほど。園芸や猫が好きで、動物愛護活動にも熱心。2度の離婚歴があり、双子を含む3人の子を持つ。現在のパートナーは、FN副党首のルイ・アリオ (2017年4月末時点) 。
(大迫秀樹 フリー編集者/2017年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報