改訂新版 世界大百科事典 「マルチンゲール」の意味・わかりやすい解説
マルチンゲール
martingale
数学用語。公平な賭(かけ)という考えから導入された概念で,1950年ころから組織的に研究され,確率論の重要な一分野になっている。確率空間(Ω,,P)上の増大情報系n(n=0,1,……)に対し,確率変数列Xn(n=0,1,……)が次の3条件,(Ⅰ)Xnはn-可測,(Ⅱ)E|Xn|<∞,(Ⅲ)E(Xn+1/n)=Xnをみたすとき,マルチンゲールという。とくに(Ⅲ)はマルチンゲール性と呼ばれ,これにより,E(Xn)はnに無関係になる。次の定理は有用である。
収束定理
ならば,Xnは概収束する。
ドゥーブの任意抽出定理
有界な停止時間の増大列τ0≦τ1≦……,に対し,(n=0,1,2,……)は,増大情報系に関するマルチンゲールとなる。例えば,(1)可積分なXに対し,nに関する条件つき平均値の列Xn=E(X/n)(n≧0)はマルチンゲールである。(2)ξn(n≧0)は平均値0の独立確率変数列で各ξnがn-可測のとき部分和はマルチンゲールになる。
(Ⅲ)のE(Xn+1/n)=Xnにおいて等号=が≧に弱められたとき,劣マルチンゲール,≦のときは優マルチンゲールと呼ばれる。連続時間変数Xt(t≧0)の場合も同様に定義される。
執筆者:西尾 真喜子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報