改訂新版 世界大百科事典 「マンティコラ」の意味・わかりやすい解説
マンティコラ
Mantichora [ラテン]
架空の怪物。ギリシア語ではマンティコラスMantichōras,英語ではマンティコアManticore。その名は元来ペルシア語で〈人食い〉を意味する語であり,西欧語はその誤読によるものだという。インドに産し,ライオンの胴体と人面をもち,また尾はサソリあるいは竜に似て毒針を有し,鹿よりも早く走ることができ,好んで人肉を食うといわれる。この怪物はクテシアスの《インド誌》を通じて西洋世界に知られ,アリストテレスも《動物誌》でこれにふれている。中世のベスティアリ(動物寓意譚)では人を殺す残忍な怪物である点が強調されている。狂暴な上に貪欲な獣で,矢のように襲いかかり食いつくすところから中世では悪魔の象徴とされた。
執筆者:荒俣 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報