ライオン(英語表記)lion
Panthera leo

デジタル大辞泉 「ライオン」の意味・読み・例文・類語

ライオン(lion)

ネコ科の哺乳類。体長約2.5メートル、尾長1メートル。ふつう全体に黄褐色で、尾の先に暗褐色の房毛をもち、雄にはたてがみがある。アフリカサバンナに十数頭の群れですみ、共同でシマウマレイヨウなどを狩る。インド西部のカチャワル半島の森林の一部にも分布。百獣の王とよばれ、力の象徴とされた。獅子しし
(Lion)米国アップル社が開発したオペレーティングシステムMac OS Xのバージョン名の一。2011年7月販売。正式名称はMac OS X v10.7 Lion。トラックパッドに指先で触れて操作するマルチタッチ機能の強化が図られ、iPadiPhoneなどで使われるiOS由来の操作環境をはじめ、250もの新機能が追加された。
[類語]獅子猛虎ジャガーピューマチーター

ライオン(L10N)

localizationのlとnの間に10文字あることから「L10N」とし、「1」「0」をそれぞれアルファベットのi、oとみなした呼称》地域化エルテンエヌ

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精選版 日本国語大辞典 「ライオン」の意味・読み・例文・類語

ライオン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] lion ) ネコ科の哺乳類。体長二・五~三メートル。体毛は短く、灰褐色または黄土色で、雄は頭とくびのまわりにたてがみをもつ。頭が大きくて顔面が広く、腹部は細くしまる。尾は一メートル近くもあり、先端に房(ふさ)状の毛がある。雌はやや小形で、たてがみを欠く。幼獣には暗褐色の斑紋がある。アフリカのほか、イラン・インドにも分布。サバンナ地帯に母娘とその子どもたちを中心とする数頭から数十頭の群れをなしてすみ、シマウマ・アンテロープなどを捕食。百獣の王と呼ばれ、その咆哮(ほうこう)の声はすさまじい。しし。からしし。
    1. [初出の実例]「其物は、思ひもよらぬ獅子(ライオン)なり」(出典:今弁慶(1891)〈江見水蔭〉一一)

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改訂新版 世界大百科事典 「ライオン」の意味・わかりやすい解説

ライオン
lion
Panthera leo

シシ(獅子)の別名をもち,〈百獣の王〉と呼ばれ,ネコ科ではトラと並ぶ強大な食肉類。かつてはバルカン半島,アラビア半島からインド中部までと,アフリカの大部分に分布したが,人間との競合で分布をしだいに狭め,前100年ころにはギリシアで滅び,1858年にアフリカのケープ,65年ナタール,91年アルジェリア,1920年ころモロッコやイラク,30年ころにはイランから姿を消し,現在ではアジアではインド北西部カティアーワール半島のギル森林に一亜種インドライオンP.l.persicaが180頭ほど生息するにすぎない。アフリカでもサハラ以南の荒れ地ぎみのサバンナにだけ分布し,生息数は20万頭かそれ以下と見積もられている。

 雄のほうが大きく,体長は雄で1.7~2.5m,雌で1.4~1.75m,尾長は雄で90~105cm,雌で70~100cm,肩高は雄で平均123cm,雌で107cm,体重は雄で150~250kg,雌で120~182kg。ライオンとトラは外観こそ違うものの,頭骨や体つきは非常によく似ており,ときに区別不可能なことさえある。トラに比べライオンは,胴が短く,四肢が長く,吻(ふん)の幅が広い。ライオンは雌雄の差異が明りょうで,大きさが違うだけではなく,雄にはほおと首にたてがみがあり,前肢のひじや下腹部に長毛がある。体色は変異に富み,明るい淡黄色や銀灰色から黄赤色や暗い黄土色を帯びた褐色まである。腹面や四肢の内側は淡く,尾先の房毛(ふさげ)は黒色である。たてがみは若い個体では黄色,褐色,あるいは赤褐色だが,年齢とともに黒っぽくなる傾向があり,黒色のものも見られる。このたてがみは性ホルモンにより支配されており,去勢すると抜け落ちてしまう。成獣は斑紋を欠くが,子にはヒョウに似た斑点がある。

 平原,サバンナ,開けた林,やぶ地などを好むが,ときには半砂漠や森林でも見られ,標高5000mの高山にも出現する。複数の雌と子が中心で,それに雄が加わったプライドprideと呼ばれる群れで生活する,一つのプライドは雄が1~4頭,雌と子がそれぞれ1~16頭ほどで構成され,食物の豊富なセレンゲティ平原では一つのプライドは平均15頭からなる。雄の多くは単独あるいは兄弟で放浪していることが多く,出会ったプライドの雄と闘い,自分が新しい占有者となることが多い。そうした場合,プライドにいた子は新しい雄により殺されるという。プライドではもっぱら雌が狩りを行う。獲物はシマウマやヌー,インパラなどのアンテロープ類が主だが,ほかにアフリカスイギュウイボイノシシ,ヒヒなどのサル類も多く捕食し,アフリカゾウ,クロサイ,キリン,カバなどの子も狙う。獲物となる動物の重量は50~300kgである。

 狩りは一般に夕暮れから行われるが,他のネコ類に比べ昼行性の傾向が強い。ふつう獲物にゆっくりと忍び寄りを始めると,匍匐(ほふく)前進と凍ったように不動姿勢をとるフリーズfreezeとを交互に繰り返しながら接近し,このとき,地上にあるどんな小さな物でも身を隠すのに利用しようとする。獲物まで30mほどまで接近すると,全力で跳び出し一気に獲物を倒そうとする。ひと跳びは12mに達するが,獲物の反応も速く,50~100mを逃げれば殺される確率はかなり低くなる。ライオンは短距離であれば時速50~60kmで走ることができるが,ふつう100mを超すと狩りをあきらめる。狩りの大部分は失敗であり,61回の忍び寄りで10回しか成功しなかったという観察例もある。小型の獲物なら前足の一撃で倒し,大型であればのどをかんで殺すか,口と鼻をかんで窒息させて殺すことが多い。2頭の雌が違った方向から獲物を襲うことがあり,狩りの成功率は高まる。プライドの雄は優先的に食べ,1頭の雄は1回に40kgを食べる。年に1頭当り,10~20頭の大型草食獣が捕食される。雄は狩りをすることは少なく,なわばりを守る。なお,ハイエナやリカオンの狩った獲物を横どりして食物を得ることもある。

 繁殖は1年を通して行われ,雌は1年半から2年ごとに出産する。妊娠期間は100~119日で,川辺のやぶや岩陰で,1産1~6子,通常3~4子を生む。誕生直後の子は体重1300gほどで,目はふつう閉じているが開いているものもいる。生後3週間で歩き,3ヵ月ほどで離乳が始まり,6~7ヵ月で授乳は終わる。このころから,独立するまでの1歳半~2歳までの死亡率は高く,平均で50%を超す。遊びの中で狩りのしかたなどを学ぶが,うまく狩りができるようになるまでに最低1年半は必要である。3~4歳で性的に成熟する。寿命は飼育下での平均で13年,最高で30年近いが,自然では15年ほどとみられる。
執筆者:

ライオンは古くから猟獣として重視され,アッシリアでは常時多数のライオンをおりに入れて飼っておき,猟の際にこれを狩場に放つことが行われていた。アレクサンドリアでは狩猟の女神アルテミスの祭典に,飼い慣らしたライオンやチータに街の中を行進させる儀礼があったという。またローマのアントニウスは,これを訓練し二輪戦車を引かせるようにしたとされる。この時期には北アフリカやシリアなど文明地域のごく近辺に多数のライオンが生息していて,サーカス用動物として盛んに捕獲もされている。さらに大プリニウスの《博物誌》には,前1世紀にライオンの群れと人間を闘わせる見世物がローマで始まったとの記述が見える。将軍スラは雄100頭,カエサルは雌雄400頭のライオンを闘技場に放して剣闘士(グラディアトル)と闘わせている。当時はライオンの頭に外套(がいとう)をかぶせれば簡単にこれをとらえることができると信じられていたらしく,ちょうど闘牛のように外套1枚でライオンと対決する競技も行われた。

 古代地中海文化圏での人とライオンの関係はこのように緊密で,たとえば《イソップ物語》にもその一端がうかがえる。猟師の網にかかったライオンが,むかし食べずに逃がしてやったことのあるネズミに助けられる話は,〈事情が変われば強者も弱者に救われる〉との教訓を説いて有名である。またいっしょに旅をした人とライオンの話もおもしろい。人に絞め殺されるライオンの姿を刻んだ彫刻を見て,〈人間は君より強い〉と人が自慢すると,ライオンは〈もしわれわれに彫刻がつくれたら,ライオンの足に踏まれている多くの人を見るだろう〉と答えたという。これらの物語にはライオン狩りの具体的な方法が述べられており興味ぶかい。さらにライオンは文様にもとり入れられ,東アジアに広く伝播したため,日本のように直接これを産しない地域にまでその形姿や象徴的意味が浸透した。東洋におけるライオンの図像表現については〈獅子〉の項目を参照されたい。

獣類中もっとも勇敢でもっとも高貴な性質をもつとされるライオンを〈百獣の王〉とする伝統は古い。エジプトでは太陽または夏の象徴,ギリシア・ローマでは人間を除く動物のうち唯一慈悲心をもち,女や子どもを襲わない高潔な猛獣と考えられた。また,アッシリアの各王朝では国王がみずから狩る獲物であった。強大なその力は目に集中しているといわれ,したがってライオンは眠るときにも目を閉じないと信じられた。この特性により,ライオンは見張番の象徴となり,家の門や扉に彫刻が飾られるようになった。大プリニウスは《博物誌》で,ライオンを従順にさせるには目をふさげばよいと述べている。またライオンの子は生まれ出てのち3日間を仮死状態で過ごし,やがて両親のほえ声で目をさます。これをキリスト復活の故事になぞらえ,ライオンをキリストの聖獣とみなす伝統も中世には形成された。この獣は出歩くとき尾先の房で地を掃きながら進むので足跡を残さないともいわれる。

 中世のベスティアリ(動物寓意譚)にはライオンに関する擬似自然誌が多数語られている。たとえば出産については,腹の子が子宮をつめで裂いて出てくるため母親の負担が大きく,めったに子を生まないとする。深傷を負ったときはサルを食って傷をいやし,つねに山の頂上にすんで下界を見据えており,その目でにらみつけられた獲物はすくんで動けなくなる。したがってライオンの目を携帯する人間は戦いに勝つといわれ,またその皮をかぶるかその脂を体に塗れば,毒虫や武器をはね返せると信じられた。しかしライオンにも弱点があり,ニワトリのとさかと戦車の車輪の前ではおびえて逃走する。これは中近東産のライオンを絶滅に追いやった戦車によるライオン狩りに由来する俗信であろう。また牛あるいはユニコーン(一角獣)を相手に激しく闘うといわれる。ドラゴン(竜)とも敵どうしで,両者が戦えば相打ちになる。

 古代エジプトでは,太陽がしし座にはいる8月にナイル川の増水が始まるため,泉や水源にライオンの頭を模した彫刻を飾った。この風習がギリシア・ローマに伝わり,口から水を吐くライオンの意匠が浴場などに使われるようになった。こうして太陽と関連づけられたライオンは,エジプトでは人面でライオンの体をもつスフィンクス,アッシリアでは有翼のライオンとして神格化され,いずれも力と知恵の象徴となった。これらの神格化はキリスト教にとり入れられてダニエルのテトラモルフtetramorph(《ダニエル書》7章参照)のような表象に用いられた。

 中世になるとライオンはキリスト自身の象徴とされるようにもなる。なぜならキリストは,しっぽで足跡を消すライオンのように神性を消して人間となり,慈悲に対してはつねに目をふさがず,ライオンの子のように3日目に復活したからだとされる。また騎士たちが冑にこの獣を彫り込んだのは,たとえ戦死しても魂だけはキリストに救済されることを願ったからだといわれる。しかし半面,イングランドやスコットランドの獅子章はライオンのたけだけしさと強さを象徴したものである。それによりイギリス自体を戯画化する際にも王冠をかぶったライオンの姿が用いられる。聖人の図像ではヒエロニムスとともにしばしばライオンが従順な下僕として描かれる。これは修道院にはいりこんだライオンをこの聖人がもてなし,とげを抜いてやったという伝説に由来するものである。

 錬金術の象徴体系では赤いライオンは硫黄を表す。また緑のライオンは混沌段階の原物質を表し,太陽を飲みこむ緑色のライオンという形で寓意化されている。これは原物質が〈賢者の石〉に触れて変成を開始する意味だという。しかし,この寓意はライオンが太陽を吐きだすところとも解釈でき,エリクシル(錬金薬液)の精製過程を示すとする見解もある。これに関連し2頭のライオンがともに描かれれば水銀の二重性を表す表象となり,ここから水星とも関連づけられたりする。一方,占星術では,エジプトでの象徴に従って獅子宮が8月と夏を象徴し,〈地下の太陽〉と形容される。ライオンがイノシシ(冬)やユニコーン(春)を狩る図像は,いずれも夏の到来を示したものである。また正面を向いたライオンの顔(獅子頭)は火炎に取り巻かれた太陽の表象として図像化されている。これはさらにミトラス教の時の神アイオンAiōn,エジプトで用いられた背中あわせのライオンの意匠などにもかかわり,時の経過(日の出,日の入り)を表した。しかし他方,キュベレの乗る二輪戦車を引く獣,イシュタルの聖獣としては,太陽の授精力や豊饒性を表現する。また〈地下の太陽〉(地霊)との連想からしばしば月とも関連づけられることもある。一方,その狂暴性を強調させた表象も多い。たとえばペルシアやインドの美術では月と太陽,またはヒツジとライオンを対(つい)にして前者が楽園や平和を表す。ここでは狂暴なライオンは死の象徴であり,エジプトのセクメトやカルデアのネルガルといった死をもたらす悪神の持物であった伝統を継いでいる。この獣の象徴的意味がいかに複雑であるかを物語る実例といえよう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ライオン」の意味・わかりやすい解説

ライオン
らいおん
lion
[学] Panthera leo

哺乳(ほにゅう)綱食肉目ネコ科の動物。かつては熱帯降雨林とサハラ砂漠を除くアフリカ全域、アラビア半島、ギリシア、小アジア、インドまで広く分布したが、紀元前100年ごろにギリシアで滅んでからは各地で減少し、19世紀にはケープ、ナタール、アルジェリアで絶滅し、20世紀前半にはイラク、イラン、モロッコなどから姿を消した。現在ではアフリカの内陸部と、わずかにインド西部のガー森林に残るだけである。草原や乾いた半砂漠地帯にすみ、アフリカではアカシアの木が散在するサバナの川沿いの土地に多く、インドでは落葉樹のチークにアカシアなどがまばらに生えている林に生息する。

[今泉忠明]

形態

トラとともにネコ類のなかで最大で、雄は体長1.6~2.4メートル、尾長75~100センチメートル、体重150~260キログラムに達するが、雌はずっと小形である。頭骨などはトラに似るが、体つきはトラに比べて胴が短く四肢が長く、腹が締まり、跳ぶことよりも走るのに適する。外観はトラとまったく異なり、幼獣は暗褐色ないし黒色の斑点(はんてん)があるが、普通、生後半年を過ぎるとほとんど消失する。尾の先端には暗褐色の房毛がある。雄は1歳半ごろから特有のたてがみを備え始め、ほかに肘(ひじ)やかかと、胸から腹にも長毛が発達する。耳は先が丸く、耳介の裏面は基部が黒く白斑がある。体色、たてがみの長さや色、腹面の長毛の分布、体の大きさなどは地方によって違いがみられ、いくつかの亜種に分けられている。

[今泉忠明]

亜種と分布

最大の亜種はケープライオンP. l. melanochaitusで、正確な記録はないが、体長2.4メートル、尾長90センチメートルほどもあったといわれる。体は黄褐色、たてがみは純黒色で長く肩よりも後方に達し、腹面にも黒い長毛がある。ケープとナタールに分布したが、1858年から1865年の間に絶滅した。この亜種と並び大形といわれるのがバーバリライオンP. l. leoで、体は暗黄褐色、たてがみは黒毛が多く長く肩を越え、胸から腹にも黒茶色の長毛がある。北アフリカのバーバリ地方からエジプトまで分布したが、1922年ごろに絶滅した。現生する最大のものは、南アフリカのトランスバールライオンP. l. krugeriと、セネガルからナイジェリアに分布するセネガルライオンP. l. senegalensisで、体長2メートル前後、尾長95センチメートル前後に達する。たてがみはそれほど長くなく、体下面の長毛もない。中形のものは、アフリカ東部のマサイライオンP. l. massaicus、ウガンダライオンP. l. nyanzaeと、アフリカ南部のカタンガライオンP. l. bleyenberghi、カラハリライオンP. l. vernayiで、体長1.9メートル前後、尾長90センチメートル前後である。アジアに分布する唯一の亜種インドライオンP. l. goojratensisも中形で、体長1.95メートル、尾長83センチメートルぐらいである。外形はバーバリライオンに似ている。個体数は200頭ほどで、絶滅が心配され、厳重に保護されている。小形のものは、アフリカ北東部に分布するソマリライオンP. l. somaliensisとアビシニアライオンP. l. rooseveltiで、体長1.8メートル、尾長80センチメートルほどである。ソマリライオンはたてがみが貧弱で肩には達さず、しばしばたてがみのない雄がみられる。アビシニアライオンはたてがみは短いが、腹面に黒い長毛があり、バーバリライオンに似ている。

[今泉忠明]

生態

普通は群れで生活する。群れは、平均すると2頭の雄の成獣、6頭の雌の成獣、1頭の雌の亜成獣、2頭の1歳以上の子、5頭の1歳未満の子からなり、プライドprideとよばれる。ほかに若い雄だけの群れも知られる。プライドはほぼ一定の行動圏をもち、広さは食物量とプライドの大きさによって異なるが、40~500平方キロメートルである。狩りは普通、夕方から夜間に行われるが、日中もしばしばみられる。プライドの雌たちが協力して獲物を倒すことが多いが、雄が協力することも、自力でとらえることも知られる。また、ヒョウ、チーター、ハイエナなどの獲物を横取りすることもある。獲物はヌー、シマウマ、トムソンガゼル、イボイノシシで、アフリカゾウの子やスイギュウ、サイなどをも襲う。走る速さは時速48~60キロメートルに達するが、追跡距離は100~200メートルである。なお、一跳びで幅12メートル、高さ3.6メートルを超えるという。1頭のライオンは1年間に体重120キログラムの獲物を20頭ほど食べ、一度に22~27キログラムの食物をとる。

 繁殖期は一般に不定で、子は一年中みられる。妊娠期間は100~116日、1産2~4子である。雌親は乾期であれば川辺の茂みなどで、雨期なら小高い岩陰などで出産する。子は体長20センチメートル前後、尾長10センチメートル前後、体重1.2~1.5キログラムほどで、目はほとんど閉じている。目は2~3週間で完全に開き、8~10週間乳を飲む。3週間ほどで歩けるようになり、4~5週間で動くものを追ったりじゃれたりし、5~7週間で雌親のあとをついて歩くようになる。2歳ほどで独立し、3~4歳で性成熟する。飼育下での寿命は25年である。

[今泉忠明]

人間との関係

かつてはアフリカからインドにかけて広く分布したライオンも、文明の発達による草食獣と生息地の減少で各地から姿を消し、植民地時代には狩猟が加わって分布域はさらに狭まった。その間にしばしば「人食いライオン」が出現している。なかでも、1898年に東アフリカのウガンダ鉄道の工事キャンプを襲った2頭のたてがみのない雄ライオンの話は、「ツァボの人食いライオン」として有名である。このライオンは、工事に従事していたインド人28人と数十人の原地人を食い殺したのである。9か月余りして2頭のライオンは射殺され、標本としてシカゴのフィールド博物館に陳列されている。野生のライオンは減少しつつあるが、世界各地の動物園などでは繁殖率が高く、増加を抑えるのに苦慮している。また、日本でもペットとして家庭で飼育されることがあるが、地方自治体では事故防止などのために「動物の保護および管理に関する条例」(いわゆるペット条例)を設けつつある。

[今泉忠明]

民俗

百獣の王とよばれるライオンは、力の象徴として、しばしば王、王権、さらにはカトリック教会における神、聖人(聖マルコは有翼のライオンによって表される)などと結び付けられてきた。南部アフリカ、ショナ人の首長は、死後ライオンに姿を変えるとされる。また、実際に王がライオンを手なずけて飼っていたという事例も、古代エジプト、ラムセス2世(在位前1304~前1237ころ)の例や、アッシリアのアッシュール・バニパル王(在位前668~前627)の宮殿で行われたライオン狩りのレリーフ彫刻などにみられる。ライオンは、人間界における力の保持者と対比されるだけでなく、ライオンの具現する破壊力をもしのぎ、それを統御する者を際だたせる象徴でもある。克服すべき(克服された)力の象徴としてのライオンは、前記アッシリアの彫刻(ライオンが飼育檻(おり)から放たれて殺されるという、王主催の儀礼を描く)にも、また、ギリシア神話のヘラクレスの12の功業の一つ、ネメアのライオン退治の物語にも表れている。ケニアのマサイ人において、男子が成人の一人前の戦士と認められるためには、ライオンと戦い倒さねばならないとされていたことも同様の例である。いずれにしても、ライオンを倒した者は、その強い力を自らのものとすると考えられているのであろう。

 支配する力と破壊する力の両義性をもつ力の象徴としてのライオンは、ヒンドゥーの神話にも表れる。太陽の光の神格化とされるビシュヌは、魔神ヒラニヤカシプを、人身獅子(しし)頭の姿に変身して倒した。しかし、その後も狂暴な力を振るい続けたため、自らもライオンに似た怪獣に化身したシバ神によって倒されたとされている。恩恵をもたらすと同時に破壊力をもつ太陽との関係は、古代エジプトの太陽神ラーとライオンの結び付きにもみられ、太陽の通路の地下トンネルへの入口と出口はライオンによって守護されているとされていた。門、境界の守護者としてのライオンは、ミケーネの獅子門、ヒッタイトの首都ハットゥシャ(ボアズキョイ)の獅子門、さらには、ヨーロッパ、ロマネスク教会の入口に施された悪者を倒すライオンの像にもみられる。アフリカ各地に、ライオン人間(あるいは獣人間)の秘密結社が存在していたとされ、ときには、王や首長の権力の乱用をチェックするために力を行使する一方、残忍な方法で人を殺害し食人をも行う悪人の結社として、恐怖の対象ともなった。ここにも、ライオンのイメージの両義性をみることができよう。

[渡辺公三]

『G・シャラー著、小原秀雄訳『セレンゲティライオン』上・下(1982・新思索社)』



ライオン(株)
らいおん

洗剤、歯みがき、油脂などの大手メーカー。1891年(明治24)初代小林富次郎(1852―1910)が東京に創業した小林富次郎商店が発祥。せっけん、粉歯みがきを製造。「獅子(しし)印ライオン歯磨」を販売して成功、1910年(明治43)せっけん部門をライオン石鹸(せっけん)工場として分離。せっけん工場は1919年(大正8)ライオン石鹸株式会社となり、40年ライオン油脂と改称。小林富次郎商店は1918年株式会社小林商店となる。「ライオン歯磨」「ライオン歯刷子(ブラシ)」はアジア各地にも輸出され最大のブランドに成長。第二次世界大戦後の1949年(昭和24)にはライオン歯磨と改称、60年代以降は化粧品、薬品、食品などの分野に多角化。1980年ライオン油脂と合併し現社名となる。資本金344億円(2007)、売上高2671億円(2007年12月)。国内に4工場、4研究所、関連会社国内16社、国外6か国8社。

[森 真澄]

『ライオン歯磨株式会社編・刊『ライオン歯磨八十年史』(1973)』『ライオン油脂株式会社編・刊『ライオン油脂六十年史』(1979)』『ライオン株式会社社史編纂委員会編纂『ライオン100年史――いつも暮らしの中に』(1992・ライオン)』


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百科事典マイペディア 「ライオン」の意味・わかりやすい解説

ライオン

シシとも。食肉目ネコ科の哺乳(ほにゅう)類。雄は体長2.6〜3.3m,尾60〜100cm,肩高1.2m,雌は小さい。体毛は短く,黄褐〜灰褐色,雄はたてがみをもつ。インド西部のギル森林(亜種インドライオン)とアフリカ(マサイライオン,バーバリーライオン,ケープライオンなど6亜種)に分布。アフリカの亜種は広い草原に群れ(プライド)ですみ,シマウマ,レイヨウ,スイギュウなどを食べる。狩りはおもに夜行うが,茂みのあるところでは日中も行う。繁殖期は一定せず,1腹1〜5子,平均2〜3子前後。利口で比較的温和であるが,老獣などにはときに人食いとなるものがある。よく動物園で飼育され,ライガー(雌トラ×雄ライオン),タイゴン(雌ライオン×雄トラ),レオポンなどの一代雑種も作られた。
→関連項目獅子

ライオン[株]【ライオン】

洗剤,化粧品,歯磨,薬,食品,化学品などを扱う大手メーカー。歯磨製品では業界首位。1891創業者小林富次郎が石鹸・マッチの原料と石鹸の製造販売を開始。1896年〈獅子印ライオン歯磨〉と名付けた粉歯磨を発売。1918年ライオン歯磨設立。1980年石鹸を主力としたライオン油脂と合併。現在,特に家庭用トイレタリー製品のほか,薬品業界や食品調味料業界にも展開をみせている。家庭用品全般にわたって次々と新製品を開発。最近ではコンパクト洗濯洗剤がヒットした。アジア市場も重視している。本社東京,工場東京,千葉など。2011年資本金344億円,2011年12月期売上高3275億円。売上構成(%)は,一般用消費材74,産業用品9,海外16,その他1。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ライオン」の意味・わかりやすい解説

ライオン
Panthera leo; lion

食肉目ネコ科。ネコ科最大の動物で,雄は全長 2.5m,体重 150~250kgに達する。雌は雄より小型。雄にはたてがみがあり,頭から肩,胸をおおっており,その毛色はやや黒みがかる。通常数頭の雄と 10頭近くの雌に子供を加えた群れをつくって生活している。獲物は協力して狩り,多くは雌が実際に獲物を殺す役に当る。ジャンプ力にすぐれ,8~12mをひととびにするといわれ,また数百 kgの重さのものを引きずることができる。空腹時にのみ狩りをし,それ以外は寝そべって過すことが多い。かつてはギリシア,中近東などにも分布していたが,現在はアフリカにのみ分布し,おもにサバナに生息している。また,インドの森林にはインドライオン P. l. persicaと呼ばれる亜種が生息しているが,その数は 300頭に満たず,保護されている。

ライオン

大手石鹸・洗剤メーカー。1891年創業の小林富次郎商店を前身に,1918年小林商店として設立,1949年ライオン歯磨と改称して 1969年九州ライオン石鹸(旧東芝油脂)を合併した。一方,小林富次郎商店から分離した石鹸部門は 1919年ライオン石鹸として設立,1940年ライオン油脂に改称した。ライオン油脂は 1951年東芝油脂に資本参加,1959年三菱油化と提携,1963年アメリカ合衆国の化学会社アーマーと提携してライオン・アーマー(現ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ)を設立した。1980年,ライオン歯磨がライオン油脂と対等合併し,現社名に変更。洗剤を中心に石鹸,シャンプー,歯磨き,化粧品,油脂製品,薬品,食品,衛生用品などを手がける。海外進出も積極的に展開,さらに多数の子会社を通じて関連分野の事業に進出している。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「ライオン」の解説

ライオン

正式社名「ライオン株式会社」。英文社名「Lion Corporation」。化学工業。明治24年(1891)前身の「小林富次郎商店」創業。大正7年(1918)「株式会社小林商店」設立。昭和24年(1949)「ライオン歯磨株式会社」に改称。同55年(1980)「ライオン油脂株式会社」と合併し、現在の社名に変更。本社は東京都墨田区本所。家庭用品メーカー。歯磨きのシェアトップクラス。鎮痛解熱剤「バファリン」など医薬品も手がける。東京証券取引所第1部上場。証券コード4912。

出典 講談社日本の企業がわかる事典2014-2015について 情報

小学館の図鑑NEO[新版]動物 「ライオン」の解説

ライオン
学名:Panthera leo

種名 / ライオン
科名 / ネコ科
解説 / ネコ科ではめずらしく群れをつくります。メスは子育てや狩りで協力し合います。オスの役割は群れを守ることです。
体長 / オス1.7~3m、メス1.4~2.5m/尾長0.9~1.2m
体重 / オス150~250kg、メス120~180kg
食物 / 体重50~500kgのウシやシカなど
分布 / アフリカ、インド
絶滅危惧種 / ☆

出典 小学館の図鑑NEO[新版]動物小学館の図鑑NEO[新版]動物について 情報

デジタル大辞泉プラス 「ライオン」の解説

ライオン〔曲名〕

日本のポピュラー音楽。歌は女性歌手、May'n(メイン)と女性歌手で声優の中島愛のデュオ。2008年発売。作詞:Gabriela Robin、作曲:菅野よう子。MBS・TBS系で放送のテレビアニメ「マクロスF(フロンティア)」の主題歌に起用。

ライオン〔喫茶店〕

東京都渋谷区道玄坂にある名曲喫茶。1926年創業の老舗。1945年の東京大空襲で全焼するが、5年後の1950年にかつてと同じデザインで再建し、現在に至る。

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世界大百科事典(旧版)内のライオンの言及

【ネコ(猫)】より

…【村下 重夫】。。…

【人面獣身像】より

…その最も完成した形態はアッシリアの宮殿の門を飾っていた一対の人面有翼牡牛像で,アッカド語でラマッスlamassuないしラマストゥlamastuと呼ばれ,僻邪,吉祥,豊穣をつかさどる精霊の像といわれる。これは,知性を象徴する人間(頭部),鳥の王たるワシ(両翼),豊穣・富を代表する家畜の典型的存在たる牡牛の身体(ときには,さらに砂漠の支配者たるライオン)を合成することによって,超絶的な威力・魔力を表象している。【田辺 勝美】。…

【ネコ(猫)】より

… 子ネコのときはどの種類でも非常にかわいらしく人なつっこいが,成長するとイヌと異なり,孤独を楽しむかのように家族をさえ無視する態度を示すことがある。これは,ライオンを除く孤立して行動するネコ属の特徴で,イヌのように人べったりでないところがまた愛猫家の好む性質でもある。しかし,そのなわばり(通常飼主の家)には非常に強い執着心をもち,飼主の家族のみが同じなわばりをともにする仲間であると信じ切っている。…

※「ライオン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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