日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーイ」の意味・わかりやすい解説
マーイ
まーい
Máj
チェコスロバキアの詩人カレル・ヒネク・マーハの叙情詩的叙事詩。「五月」の意。1836年刊。「森の主」とよばれるロマンチックな盗賊ビレームとその恋人ヤルミラの悲恋を中心として、人の世のできごとと自然の叫びを歌っている。全体は四部に分かれ、インテルメッツォが2か所にある。内容的には、客観的な叙事――ビレームは処刑され、ヤルミラは湖に投身する――と主観的な叙情を交錯させ、格調に富んだ作品で、とくに一人称の使用が効果的。最終行の呼びかけには作者の名ヒネクが出てきて、急速に夢と現実が交錯する。「チェコの人びとはよき国民……」で始まる、短い前置きのつく版もある。この詩は、チェコの国民にとくに愛好され、詩学者ムカジョフスキーによる詳細な分析がある。
[飯島 周]