日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミナミウシノシタ」の意味・わかりやすい解説
ミナミウシノシタ
みなみうしのした / 南牛舌
peacock sole
[学] Pardachirus pavoninus
硬骨魚綱カレイ目ササウシノシタ科に属する海水魚。千葉県館山(たてやま)以南の太平洋岸、西太平洋、インド洋に分布する。両眼が体の右側にあるウシノシタ類。口はわずかに曲がって前方に開き、胸びれは両側ともない。有眼側の前の鼻管は短く、下眼の前縁に達しない。背びれと臀(しり)びれの軟条は先端で分枝する。背びれ、臀びれおよび腹びれの基部に毒腺が開孔する。有眼側の体は灰黄褐色で小黒点を取り囲む白斑(はん)が散在する。体長23センチメートルぐらいになる。水深40メートル以浅のサンゴ礁域の砂泥底にすみ、多毛類、小型甲殻類、貝類などを食べる。日本での産卵期は初夏。乳白色の毒液は猛毒で、1500~2000倍の希釈海水でもボラやハゼ類を20分以内に死亡させることができる。サメ類、オニカマス、ウツボ類などを撃退するといわれる。皮膚は苦いが、肉は美味と言われている。
[尼岡邦夫]