まえ‐かた まへ‥【前方】
〘名〙
① 時間的に二つに分けてその早い方。また、その早い方に属することや人。
※栄花(1028‐92頃)
歌合「三月には、又
賭弓(のりゆみ)あれば、まへ方・うしろ方と、ことどもわきて、まへかたは
賀茂に参り、今一方は
北野に詣づ」
② 現在、またはある時点より以前の時を漠然とさし、副詞的にも用いる。以前。前。前かど。
※虎寛本狂言・
比丘貞(室町末‐近世初)「左様に仰らるるな、前方
拝見致た事が御座る」
③ (形動) 過去の
風情や
流儀であること。また、そのさま。古くさいさま。
旧式。
※浮世草子・好色一代男(1682)六「すこし前かたなる、おかた狂ひのやうに見えて」
④ (形動) 一定の事態にまで至っていないこと。
事物に通達していないこと。また、そのさま。
未熟。不慣れ。
※浮世草子・色里三所世帯(1688)上「金銀手に有時は此里の諸分まへかたにて気のつかぬ事多し」
⑤ (形動) 控え目であること。また、そのさま。
※浮世草子・真実伊勢物語(1690)一「
おかんはすこしまへかたにいたしましたと、とってをきの大さかづき出して」
※類従本実方集(998頃)「ゆみのけちにまだら
まくに雪の降かかれるを
入道の
少納言、まへかたのまだらまくなるゆきみれば、とあるに」
ぜん‐ぽう ‥パウ【前方】
〘名〙
※
御堂関白記‐寛弘八年(1011)六月二五日「御喪所巖陰前方有
二吉所
一」
※
歩兵操典(1928)第九五「銃を僅に前方に出し」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「前方」の意味・読み・例文・類語
まえ‐かた〔まへ‐〕【前方】
[名]
1 ある位置よりも前。
㋐前後や序列の、先の方。前側の方。「前方の来賓席」
「―後ろ方と、ことども分きて、―は賀茂に参り」〈栄花・歌合〉
㋑前の方向。ぜんぽう。「前方に見える山」
2 ある時点より過去。副詞的にも用いる。
㋐以前。先ごろ。「定刻より前方に着く」
「―拝見致いたことがござる」〈虎寛狂・比丘貞〉
㋑事前。あらかじめ。「前方から承知していた」
[名・形動ナリ]
1 時代遅れなこと。また、そのさま。
「中古は衆生―にして」〈浮・禁短気・三〉
2 不慣れなこと。また、そのさま。未熟。
「―なる買ひ手どもは、女郎に思はれんとて」〈浮・禁短気・一〉
3 控えめであること。また、そのさま。
「調子に乗りても、物は―に言ふべし」〈浮・禁短気・二〉
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