日本大百科全書(ニッポニカ) 「オニカマス」の意味・わかりやすい解説
オニカマス
おにかます / 鬼魳
鬼魣
great barracuda
barracuda
[学] Sphyraena barracuda
硬骨魚綱スズキ目カマス科に属する海水魚。沖縄ではチチルカマサー、英語圏ではグレートバラクーダまたはバラクーダという。南日本、東部太平洋を除く太平洋、インド洋、大西洋の熱帯域に分布する。オオカマスに似るが、体側にある多数の横帯は側線の上半部に限られること、背びれと臀(しり)びれの最後の軟条(なんじょう)は伸びないこと、側線有孔鱗(ゆうこうりん)数が少なく75~87枚であることなどで区別できる。口が大きく歯も鋭い。大形で全長2メートル以上にもなる。サンゴ礁域や内湾の浅所に生息する。産卵期には群れをつくるが、通常は単独で遊泳する。獰猛(どうもう)で、ときには人間を襲うことがある。スズキ類、アジ類、フグ類、イサキ類など多種類の魚を食べる。
また、とくに熱帯地方産のものには肉にシガテラとよばれる毒性があるので、食べると吐き気や運動麻痺(まひ)をおこす中毒症にかかる。そのためドクカマスともよばれている。この毒性は食物連鎖を通じ、藻類から草食魚、さらにこれを食べた本種へと伝わるものである。
大物釣りの対象魚として遊漁者には人気があり、18世紀には4.6メートル、19世紀末には2.4メートルの外国における最長記録がある。
[落合 明・尼岡邦夫]