改訂新版 世界大百科事典 「ヤブロチコフ」の意味・わかりやすい解説
ヤブロチコフ
Pawel Nikolajewitsch Jablotschkov
生没年:1847-94
ロシアの電気技術者。〈電気ろうそく〉と呼ばれたアーク灯を発明し,フランスで活躍した。サラトフ県に生まれ,ペテルブルグの軍学校で学び,モスクワ~クルスク鉄道の電信主任をつとめた。アーク灯の研究に専心すべく1875年に辞職し,翌年〈電気ろうそく〉を発表した。〈電気ろうそく〉は,陽極,陰極間にカオリンをはさんであり,複雑なレギュレーターが不要であった。アーク灯は室内照明用には光が強すぎるので,電気光の細分化が求められていた。ヤブロチコフの〈電気ろうそく〉はこの要求に沿うものであり,各国で大いに注目され導入された。彼の照明システムは,誘導コイルを使用して電気ろうそくを4本まで直列接続して使うものであった。このシステムは,交流を用い,しかも誘導コイルを使って変圧器導入のさきがけとなったことにおいて重要である。初期の交流送配電システムに直列式が用いられた(今日では並列式)のは,ヤブロチコフの方法に端を発するとみられる。〈電気ろうそく〉は結局のところ在来のアーク灯よりも高くついたのでまもなくすたれてしまったが,アーク灯照明はこれをきっかけに実用化がすすんだ。
執筆者:高橋 雄造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報