日本大百科全書(ニッポニカ) 「誘導コイル」の意味・わかりやすい解説
誘導コイル
ゆうどうこいる
induction coil
電磁誘導現象を利用して、低電力を発生させるコイル。構造の主要部分は、軟鉄棒の周りに太い銅線を数回巻いて一次コイルとし、絶縁物を介して細い銅線を多数回巻いて二次コイルとしたもので、変圧器の一種である。機械的に一次側の比較的低電圧の直流を断続して二次側に高電圧の交流またはパルスをつくりだす装置をとくにさす場合もある。その場合の動作原理は次の通りである。 のスイッチを閉じると、ばねで引っ張られて閉じている接点を通って一次コイルに電流が流れる。このとき軟鉄棒は電磁石として働き、接点を引き離す。したがって、一次コイルを流れる電流は瞬間的にゼロになり、二次コイルには電磁誘導によって高電圧が生じる。一次コイルを流れる電流がゼロになれば軟鉄棒は電磁石の作用を失うから、接点はばねで引き戻されて閉じ、電流はふたたび一次コイルを流れる。この繰り返しによって、二次コイルには高電圧が繰り返し生じる。一次コイルに並列に接続されているコンデンサーは、直流から交流への変換の効率を高める働きをする。エンジン用の場合、イグニッションコイル(点火コイル)ともよばれる。
[布施 正・吉澤昌純]