日本大百科全書(ニッポニカ) 「アーク灯」の意味・わかりやすい解説
アーク灯
あーくとう
広くアーク放電による発光、またはアーク放電による電極の発光を利用した放電灯(炭素アーク灯、水銀ランプ、キセノンランプなど)の総称とする場合もあるが、一般には炭素アーク灯をいうことが多い。炭素アーク灯は、二つの炭素電極に流れるアーク電流によって電極が白熱し、発光する現象を利用したものである。1802年イギリスのハンフリー・デービーがアーク放電を発見してから6年後の1808年に、2000個の電池を使って点灯する実験を公開した。のち1876年パリのコンコルド広場に街路灯として点灯され実用化された。日本では1878年(明治11)3月25日(のちに電気記念日となる)、工部大学校の大ホールで点灯したのが最初である。4年後の1882年、東京・銀座に建てられた街路灯によって公開されたが、それは2000カンデラの明るさであった。
炭素アーク灯の起動は、普通、両極を一度接触させてから、適当な距離に離して点灯するが、補助電極で行うものもある。一般に電極は使用中消耗するので、点灯中に電極の送り機構が必要である。また、電流を安定させるため、かならず直列に抵抗を入れる。高輝度、高演色の光源として使用され、純炭素アーク灯(実験用)、発炎アーク灯(製版、映写用)および高輝度アーク灯(映写、探照灯用)の3種あるが、1960年代以降は取扱いが容易なキセノンランプが代替光源として使用されている。
純炭素アーク灯は、直流で点灯すると、陽極先端に凹所(火坑(かこう)という)ができ、これが高い輝きの光源となる。分光分析用には、陽極に穴をあけ、そこに微量の試料を入れて発光させ、そのスペクトルを観察する。発炎アーク灯は、電極に金属の塩(えん)類をしみ込ませたもので、光色は金属特有のスペクトルを出す。たとえば、ストロンチウムは赤、カルシウムは黄、エルビウムおよびサマリウムは緑、セリウムは青白色となる。高輝アーク灯は、陽極に直径の約半分のフッ化セリウム、酸化セリウムなどの芯(しん)を入れたもので、ある電流値に達すると、急に陽極火坑が深くなり、前方に白色の陽極炎ができる。
[小原章男・別所 誠]