日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤンコー」の意味・わかりやすい解説
ヤンコー
やんこー / 秧歌
中国漢民族の代表的な民間舞踊。本来は農作業が起源といわれ、中国北方の各省に広く伝わる。地方によってそれぞれ特色があり、陝北(せんほく)ヤンコーや東北ヤンコー、山東の膠州(こうしゅう)ヤンコー、また蘇軾(そしょく)が歌詞をつくったと伝えられる河北の定県ヤンコーなど、その種類は多岐にわたる。さまざまな役に扮(ふん)した踊り手が、扇や色鮮やかな布を手に持って踊る。始めと終わりは大ぜいが隊形を変化させながら踊る集団舞踊で、途中に2、3人で演じる簡単な物語を挟むのが一般的な形式。1942年以降、陝北など中国共産党支配下の抗日根拠地で、抗日や非識字者解消など新しい内容を織り込んだ新ヤンコー運動が起こり、やがて中国革命の進展とともに全国に広まった。赤い布を腰に結び、その両端を持って隊列を組みながら踊るこのヤンコーは、翻身(ほんしん)ヤンコーなどとよばれ、革命を代表する大衆的な集団舞踊となった。革命後も祝祭日の行事などではよく演じられている。
[刈間文俊]