改訂新版 世界大百科事典 「ラズ」の意味・わかりやすい解説
ラズ
Laz
トルコ東部のトラブゾンから国境を越えてザカフカス地方のグルジア共和国に至る黒海沿岸地帯に住むカフカス系少数民族。人口は全体で10万~15万人とされる(グルジア側に1000人余)。古代から戦闘的で独立心の強い民族として名高かったが,自己の国家は建設せず,この地域に興亡した諸国家に服属した。1461年トレビゾンド(トラブゾン)帝国の滅亡以後オスマン帝国の統治下にはいり,スンナ派イスラム教徒としてトルコ化が促進された。すぐれた軍人や水夫を供給し,19世紀後半のオスマン帝国の改革期にはトラブゾン州下にラージスタン県の設置が認められた。現在はトルコ共和国のリゼ県を構成している。農民は小麦,大麦のほか茶栽培に従事し,漁労・海運業者として海外に出るものも多い。勤勉で教育水準も比較的高い。男子は頭部に黒布を巻く民族衣装と,バッグパイプにあわせて踊る勇壮な民族舞踊ホロンが有名である。女子は古来その美しさで知られる。
執筆者:小山 皓一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報