日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラブゾン」の意味・わかりやすい解説
トラブゾン
とらぶぞん
Trabzon
トルコ、小アジア半島北東部にあって黒海に臨む港湾都市。トラブゾン県の県都。人口21万4949(2000)。海陸交通の要衝で、空港も所在し、トウモロコシ、ヘーゼルナッツ、タバコ、茶、魚類などを集散する。紀元前7世紀にシノペ(現シノプ)のギリシア人の植民市として起源し、古くはトラペズスTrapezusとよばれた。前400年、『アナバシス』の著者クセノフォンがギリシア傭兵(ようへい)隊の仲間とともにメソポタミアから敗走し、たどり着いた町として著名である。ポントス王国やローマ、ビザンティン帝国領を経てのち、1204年には、十字軍のコンスタンティノープル占領の際、この地に逃れた皇子アレクシオス・コムネノスによって始められたトレビゾンド王国の拠点となった。1461年にオスマン帝国領となり、皇帝スレイマン1世(立法者、壮麗者)はこの地で生まれた。城砦(じょうさい)、アヤ・ソフィア寺院、イェニ・ジュマ・モスクなどの史跡やカラデニス(黒海)大学がある。南30キロメートルの山中にも5世紀に建てられたスメラ僧院の遺跡がある。
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